2009-01-01から1年間の記事一覧

トンプスンの代表作が映画に

ジム・トンプスンの代表作中の代表作「おれの中の殺し屋」(旧題「内なる殺人者」)が映画化されました。主演は、ルヘイン原作の「ゴーン・ベイビー・ゴーン」にも出ていたケイシー・アフレックで、監督はマイケル・ウィンターボトム。サンタモニカの映画見本市…

ジャンピング・ジェニイ/アントニイ・バークリー(創元推理文庫)

エンタテインメントの面白さの基本は、「読めばわかる!」、という単純かつ明快なものであるべきだとは思うけれども、しかし、現実には読者としてのキャリアが読書に与える影響はばかにできない。例えば、アントニイ・バークリーの『ジャンピング・ジェニイ…

全米公開が間近となった映画の「ザ・ロード」

公開が遅れていたコーマック・マッカーシー原作の映画「ザ・ロード」が、いよいよ今月末、本国のアメリカで公開されることが決まった模様です。製作過程では、ゾンビ映画さながらのメイクなどが伝えられ、どうなることやらと心配もしましたが、予告編を観る限…

弱気な死人/ドナルド・E・ウェストレイク(ヴィレッジブックス)

ドナルド・E・ウェストレイクの『弱気な死人』は、別名義のJ・J・カーマイクルで発表された作品のようだが、この作家のコメディ・センスが炸裂した痛快な作品といっていいだろう。バリーとローラのおしどり夫婦は、ある時金策が尽き、保険金詐欺を企む。妻…

バッド・ニュース/ドナルド・E・ウェストレイク(ハヤカワ文庫)

ベテラン、ドナルド・E・ウェストレイクの『バッド・ニュース』は、ドートマンダー・シリーズの新作で、あの「ホット・ロック」から数えて十件めとなる泥棒計画の顛末である。といっても、今回ドートマンダーは、なぜ自分はここにいるのか、と首を捻ってば…

最高の悪運/ドナルド・E・ウェストレイク(ハヤカワ文庫)

現代ミステリのシーンの貴重なアルチザン作家の中でも、最長老格にあたるドナルド・E・ウェストレイクの『最高の悪運』という作品。お馴染みドートマンダー・シリーズの新作である。盗みに入ったつもりが、逆に自分の指輪を盗まれてしまったドートマンダーは…

骨まで盗んで/ドナルド・E・ウェストレイク(ハヤカワ文庫)

その昔、ピーター・イエーツが映画化した「ホット・ロック」が印象に残っているせいか、わたしの頭の中では、いつも主人公役をロバート・レッドフォードが演じているドナルド・E・ウェストレイクのドートマンダー・シリーズ。この泣く子も黙るクライム・コメ…

天から降ってきた泥棒/ドナルド・E・ウェストレイク(ミステリアス・プレス文庫)

ドートマンダー・シリーズといえば、つい何年か前にレンタルヴィデオ屋でクリストファー・ランバートがドートマンダーを演じる「ホワイ・ミー?」を見つけて思わず小躍りした記憶がある。ドナルド・E・ウェストレイクの『天から降ってきた泥棒』は、シリー…

聖なる怪物/ドナルド・E・ウェストレイク(文春文庫)

『聖なる怪物』は、新刊といっても二十年以上も前の作品の発掘なのだが、これがウェストレイクの餞舌な語りの魔術を駆使したなんともユニークな作品なのである。脚光と醜聞に満ちた人生を歩んだ老俳優のもとを訪れるインタビュアー。問わず語りのような人生…

鉤/ドナルド・E・ウェストレイク(文春文庫)

ミステリの分野で剽窃というテーマ自体は、さほど珍しくない。だから、ドナルド・E・ウェストレイクがこのテーマに挑んだと聞いたときは、逆にちょっとした興味がわいてきた。そんなありふれたテーマを、ミステリの酸いも甘いも知るウェストレイクが、どう…

斧/ドナルド・E・ウェストレイク(文春文庫)

ドナルド・E・ウェストレイクの『斧』は、帯のキャプションにもあるように、「シンプル・プラン」や「ポップ1280」と肩を並べるべき犯罪小説であるが、失業した主人公が再就職のライバルを蹴落とすために殺人を重ねていくというアイデアが、現代的であると同…

忙しい死体/ドナルド・E・ウェストレイク(論創社)

昨年の大晦日に休暇先のメキシコで亡くなったというドナルド・E・ウェストレイクの訃報は、ミステリ・ファンを嘆かせた。ただ、偉大なる才能は失われたが、未紹介のウェストレイク作品はまだまだ山ほど残されているのが、日本の読者にとって、せめてもの救…

泥棒が1ダース/ドナルド・E・ウェストレイク(ハヤカワ文庫)

『泥棒が1ダース』は、〈現代短篇の名手たち〉と銘打たれたシリーズ企画の一冊で、悪党パーカーや元刑事のミッチ・トビンらと並んで、作者の看板シリーズのひとつである盗みのプロ、ジョン・ドートマンダーが登場する作品だけ(一編のみ、並行世界に住むも…

氷姫/カミラ・レックバリ(集英社文庫)

「ミレニアム」三部作の登場を待つまでもなく、スウェーデンの土壌がミステリにとって肥沃なことは、マイ・シューヴァルとペール・ヴァールー、ヘニング・マンケルらを読んできたミステリ・ファンなら先刻ご承知だろう。しかし、話題のスティーグ・ラーソン…

暗殺のジャムセッション/ロス・トーマス(ハヤカワ・ミステリ)

原著刊行から四十二年ぶり。ついにこの日が来たか、という感慨にしみじみと浸りたくなる、待ち焦がれたロス・トーマスの新訳だ。『暗殺のジャムセッション』は、エドガー賞の最優秀新人賞に輝いたデビュー作『冷戦交換ゲーム』の続編で、もちろんマッコーク…

セントアンナの奇跡/スパイク・リー監督(2008・米)

同じ二次大戦下のイタリア戦線でナチスドイツによって引き起こされた大虐殺の史実に材をとったというスパイク・リーの『セントアンナの奇跡』は、冒頭になんとも魅力的な謎が提示される。一九八三年のニューヨーク、順風満帆の生活を送っていた初老の郵便局…

毒蛇の園/ジャック・カーリイ(文春文庫)

新作が待ち遠しい作家として、いまやサイコスリラーの分野だけでなく、本格ミステリファンの間でも注目を集めるジャック・カーリイ。雨の晩、ラジオの女性キャスターが、指を折られ、腹を裂かれた死体となって見つかる『毒蛇の園』でも、主人公の刑事を衛星…

日曜哲学クラブ/アレグザンダー・マコール・スミス(創元推理文庫)

『日曜哲学クラブ』は、アフリカ南部のボツワナを舞台にした〈ミス・ラモツエの事件簿〉の作者アレグザンダー・マコール・スミスによる別シリーズ。主人公のイザベルは、エディンバラ在住の哲学雑誌の女性編集者で、ある晩足を運んだコンサート・ホールで、…

グラーグ57/トム・ロブ・スミス(新潮文庫)

早くも届けられたトム・ロブ・スミスの第二作『グラーグ57』。国家保安省時代のおとり捜査のエピソードで幕があくが、間もなく「チャイルド44」の後日談であることが明らかになる。忌まわしい事件から三年が過ぎ、主人公のレオはモスクワで殺人課を創設、家…

創元推理文庫の近刊予定

10月15日付けの東京創元社のメルマガにて、創元推理文庫の近刊のラインナップが明らかにされました。海外ミステリ関係は、次のとおり。ちょっとした驚きのラインナップになってます。P・マクの「Xに対する逮捕状」は、「気ちがい殺人」(Murder Gone Mad)…

強盗こそ、われらが宿命/チャック・ホーガン(ヴィレッジブックス)

ペレケーノス祭りの次は、ハメット賞関連でこの作品を。 作者のチャック・ホーガンはアメリカ作家なのに、なぜか『強盗こそ、われらが宿命』からはイギリス映画の香りが漂ってくるから不思議だ。ボストン市の悪名高き犯罪の街チャールズタウンが舞台、主人公…

ジョージ・P・ペレケーノス著作リスト

というわけで、ペレケーノス祭りの締めくくりは、著作リストで。早川書房の頑張りで、ずいぶんと未紹介作品が少なくなったけど、危惧されるのは今後のこと。近年の作品に穴があるのも気にかかるところだ。売れないなんて言わないで、地道に読者に売り込んで…

終わりなき孤独/ジョージ・P・ペレケーノス(ハヤカワ文庫)

ワシントン・サーガに幕をひいたジョージ・P・ペレケーノスは、現在、黒人探偵のデレク・ストレンジ・シリーズに取り組んでいる。二○○二年の新作『終わりなき孤独』は、シリーズ第二作にあたる。 売春婦を支援する組織のメンバーから、デレクのもとに舞い込…

野獣よ牙を研げ/ジョージ・P・ペレケーノス(ハヤカワ文庫)

ジョージ・P・ペレケーノスの作品は、出るたびにほっとさせられる。これだけ面白い作家が、わが国でいまひとつブレイクできない理由は謎だが、あまりいい成績をあげているという話はきかないからだ。今回もとりあえずは「曇りなき正義」から一年八カ月ぶり…

愚か者の誇り/ジョージ・P・ペレケーノス(ハヤカワ文庫)

いつのまにか、翻訳の四冊目になるジョージ・P・ペレケーノスだが、昨年の『俺たちの日』でようやくチラホラ注目が集まるようになってきたようだ。でもって、今回の『愚か者の誇り』で、その人気も決定的なものになるに違いない。いやー、これはいい。饒舌…

生への帰還/ジョージ・P・ペレケーノス(ハヤカワ文庫)

書評屋冥利と呼べるものがあるとすれぱ、自分が声高に「傑作ーっ」と叫んだ作家や作品が、読者の支持を広く集めることだろう。そして、最後は年末恒例のベストテン選びに堂々の入賞を果たすことができれば言うことはない。しかし、現実はそうそう上手くばか…

曇りなき正義/ジョージ・P・ペレケーノス(ハヤカワ文庫)

過剰なまでのドラマチックな展開で、どことなく演歌チックなデニス・レヘインと、インプロヴィゼーションを思わせる軽快なフットワークを駆使して、ミディアム・テンポのジャズを彷彿とさせるジョージ・P・ペレケーノス。いまやこのふたりは、現代ハードボイ…

魂よ眠れ/ジョージ・P・ペレケーノス(ハヤカワ文庫)

ワシントンを舞台に「俺たちの日」に始まる〈ワシントン・サーガ〉の四部作でお馴染みのジョージ・P・ペレケーノスの『魂よ眠れ』。この人の大半の作品は、ワシントンという舞台で通底しており、この作品も出版社の分類上は黒人探偵デレク・ストレンジを主…

本年度ハメット賞にペレケーノス

癖のある作品を選出することでおなじみの国際推理作家協会(INTERNATIONAL ASSOCIATION OF CRIME WRITERS)北アメリカ支部が主催する2009年のハメット賞に、ジョージ・ペレケーノスの「The Turnaround」が輝きました。これまで翻訳紹介してきた出版社から見捨…

ウェストレイク脚本の映画がリメイク

昨年末に惜しまれて世を去ったドナルド・E・ウェストレイクですが、彼の原案で、脚本も担当した「W/ステップファーザー」(1988)がリメイクされます。(ブライアン・ガーフィールドとの共同執筆)元のジョゼフ・ルーベン監督作品には、「ステップファーザー…