2007-01-01から1年間の記事一覧

ラジオ・キラー/セバスチャン・フィツェック(柏書房)

英米のミステリに慣れてしまったせいか、異なる文化を背景にした非英語圏の作品には、微妙な違和感をおぼえることが少なくない。昨年「治療島」というデビュー作が話題になったセバスチャン・フィツェックというドイツ作家の第二作『ラジオ・キラー』も、そ…

ハートシェイプト・ボックス/ジョー・ヒル(小学館文庫)

アメリカの新鋭ジョー・ヒルの『ハートシェイプト・ボックス』は、モダンホラー系としては本当に久々の収穫と呼びたい。メンバーが死に、人気を誇っていたバンドも数年前に解散。ぱっとしない日々を送るロック・ミュージシャンのジュードには、奇妙な蒐集癖…

正当なる狂気/ジェイムズ・クラムリー(早川書房)

ミロドラゴヴィッチとシュグルーという、まるで自身の分身のような主人公を交互に使い分けるジェイムズ・クラムリーだが、○五年の新作『正当なる狂気』は、C・W・シュグルーの出番だ。愛する妻や義理の息子に囲まれ、穏やかな日々を送るシュグルーだったが…

北東の大地、逃亡の西/スコット・ウォルヴン(ハヤカワ・ミステリ)

この短編集の作者スコット・ウォルヴンの名をご存知の読者は少ないかもしれないが、オットー・ペンズラーの有名なアンソロジー〈ベスト・アメリカン・ミステリ〉のシリーズでは、常連としてお馴染みの人である。『北東の大地、逃亡の西』は、アメリカのロー…

キューバ・リブレ/エルモア・レナード(小学館文庫)

エルモア・レナードの『キューバ・リブレ』は、十九世紀末のスペイン統治下のキューバが舞台。カウボーイのベンは、ニューオーリンズ生れの前科者だ。旧知の牧童頭の手引きで、内戦状態のキューバで一儲けをしようと、数十頭もの馬を引き連れ、かの国へと海…