2011-10-01から1ヶ月間の記事一覧

幻影の書/ポール・オースター(新潮文庫)

新刊ではありませんが、とお断りしたうえで、大好きな作品がやっと文庫に入ったので、紹介させてもらおう。ポール・オースターと映画の世界は切っても切れない関係にあるが、その結びつきの強さでは『幻影の書』という作品が一番だろう。妻子を飛行機事故で…

謝罪代行社/ゾラン・ドヴェンガー(ハヤカワ・ミステリ、ハヤカワ・ミステリ文庫)

〈ミレニアム三部作〉の日本上陸は、英仏以外のヨーロッパ諸国にわが国読者の目を向けさせる大きなきっかけとなったが、話題沸騰の北欧勢に負けじと、ドイツからも気鋭の作家の登場だ。クロアチア生まれのドイツ作家ゾラン・ドヴェンカーの『謝罪代行社』で…

この愛のために撃て/フレッド・カヴァイエ監督(2010・仏)

アカデミー賞監督のポール・ハギスがラッセル・クロウの主演で撮った、冤罪で投獄された妻を夫が脱獄させるという『スリーデイズ』(2010)は、フランスの新鋭フレッド・カヴァイエのデビュー作『すべて彼女のために』(2008)のリメイクだが、その…

ドライブ・アングリー3D/パトリック・ルシエ監督(2010・米)

人生初の3D映画体験は、忘れもしない三十八年前の夏、新宿東急で観た『悪魔のはらわた』だ。映画観の入り口で渡されたプラスチック製の眼鏡をかけ、次々鼻先につきつけられる血まみれの首切り挟みや生々しい臓物に首をすくめた記憶がある。キャンプユーモ…

ピグマリオンの冷笑/ステファニー・ピントフ(ハヤカワ文庫)

エドガー賞の新人賞受賞者のステファニー・ピントフは、早くも第二作の『ピグマリオンの冷笑』が紹介されている。デビュー作の『邪悪』に引き続き、二十世紀初頭のニューヨークを舞台に、刑事のサイモン・ジールとアマチュアの犯罪学者のアリステア・シンク…

記者魂/ブルース・ダシルヴァ(ハヤカワ・ミステリ)

開巻すぐに目に飛び込んでくるのは、故エヴァン・ハンターから著者にあてての手紙だ。AP通信の記者だったブルース・ダシルヴァは、彼の記事を目にとめた巨匠の励ましがきっかけで、この『記者魂』を書いたという。その間、十六年という歳月が流れているが…