2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

籠の中の乙女/ヨルゴス・ランティモス監督(2009・希)

ギリシャ映画といえば、故テオ・アンゲロプロス監督の『旅芸人の記録』(1975)が、真っ先に思い浮かぶ。約四時間にわたり猛烈な睡魔と悪戦苦闘した二十年以上も前の苦い記憶とともに。それ以来、かの国の映画と聞く度に、アンゲロプロスの眠気を誘う(…

依頼人/ソン・ヨンソン監督(2011・韓)

韓流ミステリ映画の面白さには毎度舌を巻くばかりだが、『セブンデイズ』、『哀しき獣』、『カエル少年失踪殺人事件』といった近年の収穫ともいうべき作品に出演していた男優たちが一堂に集う『依頼人』もその例に洩れない。結婚記念日の晩、花束を手に仕事…

The 500/マシュー・クワーク(ハヤカワ・ミステリ)

草の頂き、袋の中の豚、ヴァイオリン・ゲーム。耳慣れないこれらの言葉も、「ほら、映画でもあったでしょ、〈スパニッシュ・プリズナー〉ってのが」というヒントを出せば、ピンとくる読者は多かろう。そう、すべては詐欺の名前。その手口を知りたくば、今月…

この声が届く先/S・J・ローザン(創元推理文庫)

同じシリーズでも、一作ごとに作風を描き分ける多彩さは、すでに短編集でもおなじみのS・J・ローザンだが、今度の『この声が届く先』には驚かされた。このシリーズでは探偵コンビが一作ごとに主役(語り手)を交替するが、今回は、何者かによって誘拐され…