強盗こそ、われらが宿命/チャック・ホーガン(ヴィレッジブックス)

ペレケーノス祭りの次は、ハメット賞関連でこの作品を。
作者のチャック・ホーガンはアメリカ作家なのに、なぜか『強盗こそ、われらが宿命』からはイギリス映画の香りが漂ってくるから不思議だ。ボストン市の悪名高き犯罪の街チャールズタウンが舞台、主人公は強盗を生業とする男たちである。裏社会の犯罪者たちと同時に、彼らを追うFBI捜査官の姿をも描く犯罪小説で、相手を強盗と知らずに恋に落ちる銀行の女支店長も絡んでくるので、恋愛小説の色合いもある。
冒頭の銀行襲撃シーンなど、プロフェッショナルの仕事ぶりに目を奪われる箇所もあるが、メインテーマは男たちの友情が破綻していく滅びの物語だろう。幼い頃から培われてきた筈の彼らの信頼関係は、ひとりの女性の登場をきっかけに、懐疑へと変っていく。克明に描かれるその歯車が狂っていく過程が読みどころとなっている。悲痛すぎるクライマックスが待ち受けるが、終章にあえて置かれたワンシーンが、本作を非常に印象深いものにしている。
[本の雑誌2007年12月号]

強盗こそ、われらが宿命(さだめ)〈上〉 (ヴィレッジブックス)

強盗こそ、われらが宿命(さだめ)〈上〉 (ヴィレッジブックス)

強盗こそ、われらが宿命(さだめ)〈下〉 (ヴィレッジブックス)

強盗こそ、われらが宿命(さだめ)〈下〉 (ヴィレッジブックス)