2012-05-01から1ヶ月間の記事一覧
先ごろ出た新訳版で『羊たちの沈黙』が若い読者を獲得していると聞くが、こちらも三十七年ぶりのリニューアルで注目されるジョン・ル・カレの『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ[新訳版]』である。アップデートされた名作の再登場に拍手を送るオー…
CWA賞の最優秀長編部門で候補にもなった前作は日本での評判もよく、その続編を待っていた読者も多かったろう。サイモン・ベケットの『骨の刻印』は、三年ぶりの再登場となる〈法人類学者デイヴィッド・ハンター〉シリーズの第二作にあたる。 ひと仕事を終…
一昨年の英国推理作家協会賞新人賞部門に輝いたライアン・デイヴィッド・ヤーンの『暴行』は、異色中の異色作といっていいだろう。一九六四年のニューヨーク。ある晩のこと、一人の若い女性がアパートメントの中庭で暴行を受け、瀕死の状態で横たわっていた…
『フローズン・リバー』や『ウィンターズ・ボーン』といった名作を輩出し、いまやミステリ映画の名門といった感もあるサンダンス映画祭だが、デヴィッド・ミショッド監督によるメルボルン発の犯罪映画『アニマル・キングダム』も同映画祭でグランプリ(ワー…
ひと頃は映像作家としてほとんど死に体という陰口まで囁かれたガイ・リッチーが見事に息を吹き返した前作。そして、この続編『シャーロック・ホームズ シャドウゲーム』では、ついにかつての勢いを取り戻した感がある。欧州の各地で起きる謎の爆破事件の裏に…
金持ちは長生き、貧乏人は短命。そんな不条理な(とばかりはいえない?)格差が支配する世界を描く『タイム』は、設定はSF(近未来というよりはパラレルワールドか)だが、随所に切れのいいサスペンスが仕掛けられている。科学技術が進み、老化や寿命とい…
饒舌で機知にとんだ語り口は、『ストリート・キッズ』以来、ドン・ウィンズロウの持ち味といっていいだろう。とはいえ、過去を振り返るとそのスタイルは必ずしも一様ではなく、出だしから軽快で乗りのいい新作『野蛮なやつら』でも、またまた新たな語りのマ…
デビュー作『水時計』の洪水迫り来るクライマックスから、一転して今度は記録的な大旱魃で幕があく第二作『火焔の鎖』。お手本はやはり彼の地を舞台にしたブッカー賞作家グレアム・スウィフトの『ウォーター・ランド』(新潮クレスト・ブックス)だろう。し…