2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

コラライン、いよいよ日本公開

すでに海の向こうでは今年の2月に公開済みのニール・ゲイマン原作、ヘンリー・セリック監督「コララインとボタンの魔女」の日本公開が正式に決まりました。ヤッホー。公開は2010年2月の予定。 今回は、ウェブ版の予告編をご紹介しておきます。(劇場用とま…

クリスティの未発表短篇はポアロもの

1976年に85歳で世を去ったアガサ・クリスティが生前に使っていたノートブックが見つかり(73歳の頃らしい)、イラストやメモとともに未発表の短篇2篇が含まれていたことが伝えられていたが、この秋めでたくHarperCollins社から「Agatha Christie’s Secret No…

悪霊の島/スティーヴン・キング(文藝春秋)

少し前に息子のジョー・ヒルの本格的なデビューが大きな注目を集めたが、スティーヴン・キング本人の方も一向に衰えは見えない。二○○八年の新作『悪霊の島』は、同年のブラム・ストーカー賞で、短編集部門とあわせての二部門制覇を果たし、マスター・オブ・…

災厄の紳士/D・M・ディヴァイン(創元推理文庫)

てっきり本格ミステリは死んだ、と思っていたあの時代に、こんな作品をバリバリ発表していたなんて、D・M・ディヴァインの『災厄の紳士』。まさに本格ミステリの救世主だったんだな、この作家。 主人公のネヴィルはヘボな恋愛詐欺師。大した儲けにならないに…

水時計/ジム・ケリー(創元推理文庫)

まさかドロシイ・セイヤーズの全長篇が日本語で読める日が来るなんて夢にも思っていなかった今から三十年前。古書店巡りに持ち歩く探求書リストのトップにあったのは、平井呈一訳の「ナイン・テイラーズ」だった。ずいぶんと必死に探したものだけど、結局二…

死の舞踏/ヘレン・マクロイ(論創社)

「暗い鏡の中で」で知られるヘレン・マクロイも、昔に較べれば随分と翻訳紹介が進んだ感があるけれど、しかしまだまだ気になる欠落は多い。今回、紹介の運びとなった『死の舞踏』もそのひとつで、本作はマクロイのデビュー作であるとともに、レギュラー探偵…

割れたひづめ/ヘレン・マクロイ(国書刊行会)

ヘレン・マクロイの『割れたひづめ』が出た。おなじみの精神分析学者のベイジル・ウィリングが登場する作品で、冒頭からなかなか強烈な謎を読者に叩きつけてくれる。その部屋で一夜を過ごしたものは、必ず悪魔に命を奪われる。そんな言い伝えのある屋敷に、…

歌うダイアモンド/ヘレン・マクロイ(晶文社)

<晶文社ミステリ>の一冊として刊行されたヘレン・マクロイの『歌うダイアモンド』。のっけから、別れた元夫のブレット・ハリデイの序文が泣かせる、おそらくはマクロイ唯一の短編集*1だが、長いものばかりでなく、短いものもお手のものというマクロイのも…

ヘレン・マクロイ作品リスト

新訳の「殺す者と殺される者」に解説を書く際、作成したリストです。(解説にこのリストは収録されません)それにしても、「暗い鏡の中に」が手に入らない状況は実に残念。 (追記)その後編集者と相談のうえ、作品リストを文庫解説の末に載せることになりました。…

幽霊の2/3/ヘレン・マクロイ(創元推理文庫)

テレビの某番組*1人気の後押しもあってか、まさかのリバイバルを果たしたヘレン・マクロイの『幽霊の2/3』。衆人環視のもとで変死を遂げた作家の死をめぐる作品で、レギュラー探偵の精神科医ベイジル・ウィリングも登場するし、ある有名なトリックが使わ…

3時10分、決断のとき/ジェームズ・マンゴールド監督(2007・米)

重度の西部劇音痴なのに、『3時10分、決断のとき』の公開に小躍りしたのは、原作がエルモア・レナードの短篇だからだ。(〈ミステリマガジン〉1988年7月号に訳載)舞台は開拓時代のアリゾナ州。妻とふたりの息子を養い、借金を抱えて汲々とした生活を…

ミスター・ディアボロ/アントニー・レジューン(扶桑社海外文庫)

「血染めのエッグ・コージイ事件」等のジェームズ・アンダースンに再評価の光をあてたり、「ケンブリッジ大学の殺人」のグリン・ダニエルを発掘したりと、〈扶桑社ミステリー〉の本格ミステリ路線は、細々とではあるが、通好みだ。今回出た『ミスター・ディ…

犬の力/ドン・ウィンズロウ(角川文庫)

冬の時代と言われる翻訳ミステリ界だけど、今年は近年にない豊作で、この秋も読みたい新刊に事欠かない幸せな日々だ。これも、本が売れないという、出版社にとっては究極の逆境の中にあって、日夜奮闘している編集者諸氏のお陰と、まずは今月もそっと手を合…

映画「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」の公開は正月第二弾

先月の東京国際映画祭でも上映され、その後ずいぶん映画館でポスターを見かけるようになりました、映画の「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」。試写もそろそろ始まっているのかな。公式サイトがオープンになり、そこで予告編(日本版)が観られます。冒頭に…

トンプスンの代表作が映画に

ジム・トンプスンの代表作中の代表作「おれの中の殺し屋」(旧題「内なる殺人者」)が映画化されました。主演は、ルヘイン原作の「ゴーン・ベイビー・ゴーン」にも出ていたケイシー・アフレックで、監督はマイケル・ウィンターボトム。サンタモニカの映画見本市…

ジャンピング・ジェニイ/アントニイ・バークリー(創元推理文庫)

エンタテインメントの面白さの基本は、「読めばわかる!」、という単純かつ明快なものであるべきだとは思うけれども、しかし、現実には読者としてのキャリアが読書に与える影響はばかにできない。例えば、アントニイ・バークリーの『ジャンピング・ジェニイ…

全米公開が間近となった映画の「ザ・ロード」

公開が遅れていたコーマック・マッカーシー原作の映画「ザ・ロード」が、いよいよ今月末、本国のアメリカで公開されることが決まった模様です。製作過程では、ゾンビ映画さながらのメイクなどが伝えられ、どうなることやらと心配もしましたが、予告編を観る限…

弱気な死人/ドナルド・E・ウェストレイク(ヴィレッジブックス)

ドナルド・E・ウェストレイクの『弱気な死人』は、別名義のJ・J・カーマイクルで発表された作品のようだが、この作家のコメディ・センスが炸裂した痛快な作品といっていいだろう。バリーとローラのおしどり夫婦は、ある時金策が尽き、保険金詐欺を企む。妻…

バッド・ニュース/ドナルド・E・ウェストレイク(ハヤカワ文庫)

ベテラン、ドナルド・E・ウェストレイクの『バッド・ニュース』は、ドートマンダー・シリーズの新作で、あの「ホット・ロック」から数えて十件めとなる泥棒計画の顛末である。といっても、今回ドートマンダーは、なぜ自分はここにいるのか、と首を捻ってば…

最高の悪運/ドナルド・E・ウェストレイク(ハヤカワ文庫)

現代ミステリのシーンの貴重なアルチザン作家の中でも、最長老格にあたるドナルド・E・ウェストレイクの『最高の悪運』という作品。お馴染みドートマンダー・シリーズの新作である。盗みに入ったつもりが、逆に自分の指輪を盗まれてしまったドートマンダーは…

骨まで盗んで/ドナルド・E・ウェストレイク(ハヤカワ文庫)

その昔、ピーター・イエーツが映画化した「ホット・ロック」が印象に残っているせいか、わたしの頭の中では、いつも主人公役をロバート・レッドフォードが演じているドナルド・E・ウェストレイクのドートマンダー・シリーズ。この泣く子も黙るクライム・コメ…