2009-04-01から1ヶ月間の記事一覧

グローバリズム出づる処の殺人者より/アラヴィンド・アディガ(文藝春秋)

アラヴィンド・アディガの「グローバリズム出ずる処の殺人者より」は、ブッカー賞受賞、作者がインドのムンバイ在住、付けも付けたりという邦題と、ミステリ・ファンにはさほど関心のわかない話題ばかりが先行するが、ハイスミスも真っ青の犯罪小説として、…

砂漠の狐を狩れ/スティーヴン・プレスフィールド(新潮文庫)

スティーヴン・プレスフィールドの『砂漠の狐を狩れ』は、二次大戦下における北アフリカ戦線の砂漠地帯を舞台にした英国軍車両部隊の物語である。語り手は戦後出版社を興し、社主となった人物で、自身の若き日を回想するという形で語られていく。まだ二十歳…

「未完のモザイク」ジュリオ・レオーニ(二見文庫)

錬金術や占星術といった中世イタリアのペダントリーをふんだんに盛り込んだジュリオ・レオーニの『未完のモザイク』は、のちに「神曲」を生む若き日のダンテが探偵役として登場する歴史ミステリである。教会の工事現場で奇妙な死体となって見つかったモザイ…

川は静かに流れ/ジョン・ハート(ハヤカワ文庫)

五年前に殺人の冤罪で故郷を追われた主人公の青年アダムは、一度は訣別した過去と再び対決する覚悟で、故郷の田舎町に戻ってきた。しかし彼を呼び寄せた親友は、入れ違いに町から姿を消していた。彼を勘当した父親や前の恋人との距離感も掴めないまま、アダ…

東京創元社の文庫創刊50周年ブックレット

どうやら、先月から書店の店頭で配布されている模様です。文庫サイズ、32ページ、無料。内容は、50周年に寄せてという内外作家からの祝辞、社史年賦、記念対談(北村薫・桜庭一樹。抄録)など。先のマクロイ復刊のニュースも掲載されています。賛辞では…

野望への階段/リチャード・ノース・パタースン(PHP研究所)

本国ではバリバリと新作が上梓されているというのに、新潮文庫で「ダーク・レディ」が出たのを最後に、四年以上も翻訳紹介が途絶えていたリチャード・ノース・パタースン。ファンとしてはイライラが募る日々を送っていたのだけれど、やっと二○○七年の新作『…

ワールド・オブ・ライズ/リドリー・スコット監督(2008・米)

リドリー・スコット監督の『ワールド・オブ・ライズ』は、9・11以降、より一層深くなった中東の闇を描いている。主人公のレオナルド・ディカプリオは一匹狼のCIA工作員で、米欧諸国を脅かしている爆弾テロの首謀者アロン・アブトゥブールを必死に追っている…

ヘレン・マクロイのあの名作がこの秋に復刊

東京創元社が創刊50周年を記念して行った「復刊してほしい創元推理文庫作品」の集計が終った模様だ。詳しいランキングは現時点で未発表だが、テレビの「33分探偵」効果か、ヘレン・マクロイの「幽霊の2/3」が一位に輝き、それを受け「殺す者と殺される者」と…

浅丘ルリ子主演の「蜘蛛の巣」が上演されます

クリスティの三幕もののクライムコメディ「蜘蛛の巣」が舞台化されます。クリスティのデータベースサイトDelicious Deathによれば、「蜘蛛の巣」の初演は1954年12月、ロンドンのサヴォイ・シアターで、わが国でも主だったものだけで過去に3回上演されている…