2010-12-01から1ヶ月間の記事一覧

ロードサイド・クロス/ジェフリー・ディーヴァー(文藝春秋)

来日した生のジェフリー・ディーヴァー見たさの野次馬根性で、新作のプロモーションを兼ねたトークショーを覗いてきた。観客を共作者に見立てて小説が出来るまでを語った講演も実に楽しかったが、興味深かったのは、その後の質疑応答の中で、『眠れぬイヴの…

猛き海狼/チャールズ・マケイン(新潮文庫)

久しぶりに血湧き肉躍る海洋冒険小説と出会った。チャールズ・マケインの『猛き海狼(上・下)』である。第二次世界大戦下、愛する祖国のために命を賭けて大海原へと乗り出していくドイツ海軍の若き士官が主人公だが、ゲルマンから眺めた英米が描かれるとい…

殺す手紙/ポール・アルテ(ハヤカワ・ミステリ)

リニューアル後のポケミスには、一冊ごとに変わっていく装丁デザインの楽しみが加わったが、ポール・アルテの『殺す手紙』は、黒の色調を活かした、これまた粋な装いの一冊だ。中身が一段組みというのも、ポケミス史上初の試みだという。 物語は、第二次世界…

シルビアのいる街で/ホセ・ルイス・ゲリン(2007・西仏合作)

スペインの監督ホセ・ルイス・ゲリンの『シルビアのいる街で』もミステリ映画という物差しではかるなら、やはり厳しいものがあるといわざるをえないだろう。画家志望の青年グザヴィエ・ラフィットが、6年前に一度会った役者志望の女性を探し回るだけの物語…

ブラックランズ/ベリンダ・バウアー(小学館文庫)

デビュー作でいきなり本年CWA(英国推理作家協会)賞のゴールドダガーに輝いてしまったベリンダ・バウアーだが、受賞作の『ブラックランズ』は、児童を狙った連続殺人で服役中のシリアルキラーと、被害者の家族である十二歳の少年が、手紙のやりとりを通…

フランキー・マシーンの冬/ドン・ウィンズロウ(角川文庫)

復活の狼煙とも言うべき『犬の力』で読者の前に返り咲いたドン・ウィンズロウだが、その漲る創作意欲は次の『フランキー・マシーンの冬』でも全く衰えていない。サンディエゴでいくつもの商売を器用に営み、余暇はサーフィンを楽しむ初老の男フランク・マシ…

乱気流/ジャイルズ・フォーデン(新潮文庫)

ヨーロッパ全土に広がるナチスドイツの席巻に歯止めをかけ、第二次大戦の歴史的転換点になったと言われるノルマンディー上陸作戦。その史実を気象予測という視点から眺めたユニークなフィクションが、ジャイルズ・フォーデンの『乱気流(上・下)』である。…

墓場の少年 ノーボディ・オーエンズの奇妙な生活/ニール・ゲイマン(角川書店)

本誌読者の中にも、ニール・ゲイマンをSFやファンタジイの人と思って敬遠している向きがあるやもしれない。しかし、もしそうなら大きな損をしていると思う。良質な英ミステリにも通じるユーモアと達者なストーリーテリングから繰り出される長編小説の数々は…

愛おしい骨/キャロル・オコンネル(創元推理文庫)

看板のキャスリーン・マロリーのシリーズよりも、単発作の『クリスマスに少女は還る』で語られることの多いキャロル・オコンネルだが、もう一篇あるノンシリーズが紹介された。『愛おしい骨』は、主人公オーレン・ホッブスが、長年勤めたアメリカ合衆国陸軍…