2013-01-01から1年間の記事一覧

2013年のミステリ映画ベストテン

クライムものから、トリッキーな仕掛けのあるものまで、2013年もミステリ映画は豊作でした。国籍混交のベストテン(テンといいつつ、到底10作に収まるわけもなく。ちなみに、順位ではなく、観た順番)です。 あえてベストワンを選ぶとすれば、悩みに悩んだあ…

ミステリーズ 運命のリスボン/ラウル・ルイス監督(2012・葡仏)

よくボヤいているように、長い映画は苦手だけど、ミステリ映画だという触れ込みだし、おまけにこの邦題とあっては、観ないわけにはいかない。すなわち、〈ミステリーズ 運命のリスボン〉。南米チリ出身の巨匠ラウル・ルイス作品で、この映画の公開後に監督は…

喪失/モー・ヘイダー(ハヤカワ・ミステリ)

昨年四月二十七日の昼さがり、自宅でパソコンと睨めっこしていた私は、思わず「やった〜」と叫んだ。NYのグランドハイヤットからリアルタイムで届けられるツイートで、モー・ヘイダーがエドガー賞に輝いたことを知った瞬間のことである。『死を啼く鳥』と…

ゲットバック/サイモン・ウェスト監督(2012・米)

タイトルから連想されるのはビートルズのナンバーだが、強盗仕事にかかる直前に主人公がゲンを担いで聴き入る音楽はCCRの「ボーン・オン・ザ・バイユー」。そんなプロフェッショナルをニコラス・ケイジが演じる〈ゲットバック〉は、1997年の〈コン・…

トールマン/パスカル・ロジェ監督(米加仏・2012)

六年前に鉱山が閉鎖され、寂れてしまった炭鉱町のコールド・ロック。この町では、子どもたちが姿を消す怪事件が相次いでいた。目撃者の証言から、フードを被った長身の男が犯人との情報が流れ、子取り鬼の「トールマン」の仕業だという噂も囁かれていた。あ…

湿地/アーナルデュル・インドリダソン(東京創元社)

警察ミステリの本場といえば、マクベイン、ウォー、リューインらを生んだアメリカだが、シューヴァル&ヴァールーのまいた種がマンケルらの活躍となって実を結んだ北欧は、今やその地位を逆転しつつある。アイスランドから登場したアーナルデュル・インドリ…

裏切りの戦場 葬られた誓い/マチュー・カソヴィッツ監督(2011・仏)

ナポレオン三世が領有を宣言した十九世紀からフランスの統治下にあったニューカレドニアの小さな島で、自国の独立を求める現地住民のグループが、フランス人憲兵たちを人質に森の洞窟に立て籠もった。知らせを受け、ヴェルサイユから駆けつけた国家憲兵隊治…

無罪INNOCENT/スコット・トゥロー(文藝春秋)

連邦検察局在籍時代に書いた『推定無罪』でスコット・トゥローに注目が集まったのは一九八七年。少し遅れてデビューした『ザ・ファーム/法律事務所』のグリシャムらとともに、リーガル・スリラーの分野を牽引したのは、今から四半世紀近くも前のことになる…

逆転立証/ゴードン・キャンベル(RHブックス・プラス)

一方が法廷推理ブームの礎「推定無罪」の続編『無罪』で読者を驚かせたかと思えば、片やいきのいい新作『自白』で応酬。S・トゥローとJ・グリシャムの重鎮が揃って気を吐くリーガルスリラーの分野が元気だが、もう一人注目の新人が登場した。六十五歳のデ…

コンフィデンスマン ある詐欺師の男/デイヴィッド・ウィーヴァー監督(2011・米)

やたらと多いサミュエル・L・ジャクソンの出演作だが、しかしこの顔を出演者の中に見つけると、妙に期待感のようなものが湧いてくるから不思議なものだ。デイヴィッド・ウィーヴァー監督の『コンフィデンスマン ある詐欺師の男』で彼が演じるのは、友人を殺…

コロンビアーナ/オリヴィエ・メガトン監督(米仏・2011)

そもそもは〈レオン〉の続編として企画されたというリュック・ベッソン・ファミリーの新作〈コロンビアーナ〉は、主人公カトレアの少女時代から始まる。南米コロンビアで麻薬取引の汚れ仕事に手をそめてきた父親が、母親ともどもボスの麻薬王の手にかかって…

18の罪/エド・ゴーマン&マーティン・H・グリーンバーグ編(ヴィレッジブックス)

メイン・ディッシュ級の大長編もいいけど、たまには食後のデザートに味なショート・ストーリー集はいかが? ジェフリー・ディーヴァーやローラ・リップマンといった名だたる面々が腕をふるうエド・ゴーマンとマーティン・H・グリーンバーグ共編の『18の罪』…

ファイアーウォール(上・下)/ヘニング・マンケル(創元推理文庫)

スウェーデン南部の港町イースタを舞台に刑事のクルト・ヴァランダーの活躍を描くシリーズも、『ファイアーウォール(上・下)』(創元推理文庫)で数えて八作目。時代に敏感な警察小説として、ヨーロッパ勢の先頭を切るシリーズのひとつだ。今回の主人公は…