毒蛇の園/ジャック・カーリイ(文春文庫)

新作が待ち遠しい作家として、いまやサイコスリラーの分野だけでなく、本格ミステリファンの間でも注目を集めるジャック・カーリイ。雨の晩、ラジオの女性キャスターが、指を折られ、腹を裂かれた死体となって見つかる『毒蛇の園』でも、主人公の刑事を衛星のように取り巻く不可解な事件の数々から、やがて奇怪な絵柄を浮かび上がらせてみせる。
目撃者から類人猿と形容される謎の人物が自在に作中を往きかう展開も愉快だが、大胆不敵に仕掛けられた伏線が浮かび上がる物語の終着点は、前作「デス・コレクター」にこそ及ばぬものの、やはり見事。タイトルが意味するところの一族の忌まわしい内幕とともに、読者は愕然とすることうけ合いだ。
[本の雑誌2009年10月号]

毒蛇の園 (文春文庫)

毒蛇の園 (文春文庫)