海外ミステリはこれを読め! 》》》 †2013年(new!!) †2012年 †2011年 †2010年 †2009年 †2008年 ミステリ映画散歩 》》》 †2013年(new!!) †2012年 †2011年 †2010年 †2009年 †2008年 話題あれやこれや 》》》 †2009年 名作アーカイブス(準備中) 別館へよう…
日本推理作家協会の協会報(年に8回発行される)にミステリ映画時評を連載していて、年末年始の時期にはその年をふり返り、年間のベスト作を挙げている。昨年分も、つい先頃載ったばかりだが、ちょっと補足しておきたい事もあるので、ここに書いて一応の完…
クライムものから、トリッキーな仕掛けのあるものまで、2013年もミステリ映画は豊作でした。国籍混交のベストテン(テンといいつつ、到底10作に収まるわけもなく。ちなみに、順位ではなく、観た順番)です。 あえてベストワンを選ぶとすれば、悩みに悩んだあ…
よくボヤいているように、長い映画は苦手だけど、ミステリ映画だという触れ込みだし、おまけにこの邦題とあっては、観ないわけにはいかない。すなわち、〈ミステリーズ 運命のリスボン〉。南米チリ出身の巨匠ラウル・ルイス作品で、この映画の公開後に監督は…
昨年四月二十七日の昼さがり、自宅でパソコンと睨めっこしていた私は、思わず「やった〜」と叫んだ。NYのグランドハイヤットからリアルタイムで届けられるツイートで、モー・ヘイダーがエドガー賞に輝いたことを知った瞬間のことである。『死を啼く鳥』と…
タイトルから連想されるのはビートルズのナンバーだが、強盗仕事にかかる直前に主人公がゲンを担いで聴き入る音楽はCCRの「ボーン・オン・ザ・バイユー」。そんなプロフェッショナルをニコラス・ケイジが演じる〈ゲットバック〉は、1997年の〈コン・…
六年前に鉱山が閉鎖され、寂れてしまった炭鉱町のコールド・ロック。この町では、子どもたちが姿を消す怪事件が相次いでいた。目撃者の証言から、フードを被った長身の男が犯人との情報が流れ、子取り鬼の「トールマン」の仕業だという噂も囁かれていた。あ…
警察ミステリの本場といえば、マクベイン、ウォー、リューインらを生んだアメリカだが、シューヴァル&ヴァールーのまいた種がマンケルらの活躍となって実を結んだ北欧は、今やその地位を逆転しつつある。アイスランドから登場したアーナルデュル・インドリ…
ナポレオン三世が領有を宣言した十九世紀からフランスの統治下にあったニューカレドニアの小さな島で、自国の独立を求める現地住民のグループが、フランス人憲兵たちを人質に森の洞窟に立て籠もった。知らせを受け、ヴェルサイユから駆けつけた国家憲兵隊治…
連邦検察局在籍時代に書いた『推定無罪』でスコット・トゥローに注目が集まったのは一九八七年。少し遅れてデビューした『ザ・ファーム/法律事務所』のグリシャムらとともに、リーガル・スリラーの分野を牽引したのは、今から四半世紀近くも前のことになる…
一方が法廷推理ブームの礎「推定無罪」の続編『無罪』で読者を驚かせたかと思えば、片やいきのいい新作『自白』で応酬。S・トゥローとJ・グリシャムの重鎮が揃って気を吐くリーガルスリラーの分野が元気だが、もう一人注目の新人が登場した。六十五歳のデ…
やたらと多いサミュエル・L・ジャクソンの出演作だが、しかしこの顔を出演者の中に見つけると、妙に期待感のようなものが湧いてくるから不思議なものだ。デイヴィッド・ウィーヴァー監督の『コンフィデンスマン ある詐欺師の男』で彼が演じるのは、友人を殺…
そもそもは〈レオン〉の続編として企画されたというリュック・ベッソン・ファミリーの新作〈コロンビアーナ〉は、主人公カトレアの少女時代から始まる。南米コロンビアで麻薬取引の汚れ仕事に手をそめてきた父親が、母親ともどもボスの麻薬王の手にかかって…
メイン・ディッシュ級の大長編もいいけど、たまには食後のデザートに味なショート・ストーリー集はいかが? ジェフリー・ディーヴァーやローラ・リップマンといった名だたる面々が腕をふるうエド・ゴーマンとマーティン・H・グリーンバーグ共編の『18の罪』…
スウェーデン南部の港町イースタを舞台に刑事のクルト・ヴァランダーの活躍を描くシリーズも、『ファイアーウォール(上・下)』(創元推理文庫)で数えて八作目。時代に敏感な警察小説として、ヨーロッパ勢の先頭を切るシリーズのひとつだ。今回の主人公は…
フィルム・ノワールの末裔ともいうべき〈あるいは裏切りという名の犬〉を撮ったオリヴィエ・マルシャル監督の新作〈そして友よ、静かに死ね〉は、七十年代の初頭、フランスで民衆からもモモンの愛称で親しまれた実在のギャング、エドモン・ヴィダルの物語で…
映画祭ではなぜか先に公開されたが、〈盗聴犯〜狙われたブローカー〜〉(2011)は、二年後に製作された同じ監督・脚本チームによる先の〈死のインサイダー取引〉(2009)の続編である。といっても、盗聴という手段が作中で重要な役割を果たすのと、…
一九九七年に中国に返還された香港が、映画の世界で今なお香港映画の看板を掲げていられるのは、社会主義の中国が特別行政区として香港の資本主義活動を例外的に認めているからで、変わらぬ作品の質の高さで、東洋のハリウッドとしての伝統と命脈を保ってい…
ローレンス・ブロックが30年という長きにわたり発表してきたマット・スカダーものも、前作『すべては死にゆく』でついに幕が降ろされたと思っていたファンは多いだろう。しかし、作者は思いもかけなかった形でシリーズの新作を六年ぶりに届けてくれた。 その…
二○一二年人類滅亡説をご存じだろうか? 中央アメリカに古代から栄えたマヤ文明の長期暦は本年十二月までしかないことから、それを世界の終わりと解釈する考え方で、ノストラダムスの予言にあった一九九九年の恐怖の大王とともに、世界終末論のひとつとして…
かつて女一人に男二人の組み合わせを指してドリカム状態という言葉が流行ったが、英国から登場の新鋭、女性作家ダイアン・ジェーンズの『月に歪む夜』は、そんな三人組にひとりの女性が加わったことから、微妙な均衡状態にひびが入っていく。ヒロインは新参…
そもそもはTVの企画からスタートしたオリヴィエ・アサイヤス監督の『カルロス』は、三部作の合計が五時間半という『旅芸人の記録』も可愛く思える長尺でありながら、体感時間はさほどではない。日本赤軍によるフランス大使館占拠事件(ハーグ・1974年…
凄絶なる復讐物語『神は銃弾』を引っさげてのボストン・テランのデビューは衝撃的だった。暴力を描くのではなく、作品が暴力そのものだったからだ。しかし、バイオレンスへの徹底したこだわりに変化の兆しが見てとれたのが、障害を負うヒロインの成長を主題…
非英語圏のミステリ作家たちが脚光を浴びているが、忘れてはならない国がフランスだろう。英米を横目に、独自のミステリ観から名作の数々を生んできたこの国で、今シーンの先頭を走っているのが女性作家のフレッド・ヴァルガスである。三度にわたるCWA(…
ギリシャ映画といえば、故テオ・アンゲロプロス監督の『旅芸人の記録』(1975)が、真っ先に思い浮かぶ。約四時間にわたり猛烈な睡魔と悪戦苦闘した二十年以上も前の苦い記憶とともに。それ以来、かの国の映画と聞く度に、アンゲロプロスの眠気を誘う(…
韓流ミステリ映画の面白さには毎度舌を巻くばかりだが、『セブンデイズ』、『哀しき獣』、『カエル少年失踪殺人事件』といった近年の収穫ともいうべき作品に出演していた男優たちが一堂に集う『依頼人』もその例に洩れない。結婚記念日の晩、花束を手に仕事…
草の頂き、袋の中の豚、ヴァイオリン・ゲーム。耳慣れないこれらの言葉も、「ほら、映画でもあったでしょ、〈スパニッシュ・プリズナー〉ってのが」というヒントを出せば、ピンとくる読者は多かろう。そう、すべては詐欺の名前。その手口を知りたくば、今月…
同じシリーズでも、一作ごとに作風を描き分ける多彩さは、すでに短編集でもおなじみのS・J・ローザンだが、今度の『この声が届く先』には驚かされた。このシリーズでは探偵コンビが一作ごとに主役(語り手)を交替するが、今回は、何者かによって誘拐され…
付けも付けたりという『崖っぷちの男』というタイトルだが、マンハッタンにある老舗ホテルの二十一階がその舞台となる。その朝チェックインした謎の男サム・ワーシントンは、食事を終えるや窓の外に立ち、そばに来たら飛び降りるぞと宣言する。野次馬や警官…
ドイツ語圏を代表するスイスの作家、フリードリヒ・デュレンマットを最初に読んだのは、『嫌疑』でもなければ『約束』でもない。大学時代の第二外国語のテキストだった。辞書を引き引き読んだ戯曲『物理学者たち』の無類の面白さに感動し、この作家をもっと…