2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧

虐待/サンドラ・ラタン(集英社文庫)

作家は成長するものだな、と改めて感心させられたのが、サンドラ・ラタンの『虐待』(集英社文庫)である。カナダのバンクーバー地区を舞台にした警察小説シリーズの第二作にあたる本作は、デビュー作でもあった前作をはるかに凌ぎ、警察小説の新たな可能性…

午前零時のフーガ/レジナルド・ヒル(ハヤカワ・ミステリ)

爆破事件に巻き込まれて入院し、生死の境をさまよった『ダルジールの死』。リハビリのための海辺のクリニックで事件と遭遇する『死は万病を癒す薬』ときて、いよいよわれらがダルジール警視も第一線に完全復帰、と思いきや、日曜を月曜と間違ってしまい、警…

ザ・エッグ〜ロマノフの秘宝を追え〜/ミミ・レダー監督(米独・2009)

製作国のお膝元アメリカなどでは劇場公開されなかったと聞くミミ・レダー監督の『ザ・エッグ〜ロマノフの秘宝を追え〜』だが、実はなかなかの拾い物だ。伝説の大泥棒であるモーガン・フリーマンは、引退前の大仕事としてロマノフ王朝の秘宝に狙いを定め、そ…

フローズン・リバー/コートニー・ハント監督(2008・米)

サンダンス映画祭でグランプリに輝き、タランティーノ絶賛という折り紙が付いた新鋭コートニー・ハント監督の『フローズン・リバー』は、カナダと国境を接するニューヨーク北部の田舎町を舞台に、貧困にあえぎ、子どもを育てる金ほしさから主婦のメリッサ・…

暁に立つ/ロバート・B・パーカー(早川書房)

近年の作者に、私生活や創作姿勢などで大きな変化があったという類の話は聞かないが、ここ数年の〈スペンサー〉シリーズには、ときに目を瞠るものがある。一九三二年生まれだから、生前のロバート・B・パーカーは日本でいう喜寿の年を迎え、人間として作家…

死角 オーバールック/マイクル・コナリー(講談社文庫)

上下巻でなかったり、邦題のつけ方が変わっていたりと、佇まいがいつもと異なるマイクル・コナリーの新作は、そもそも新聞小説という形式で書かれた作品のようだ。ウィークリー紙に合計十六回にわたって連載された事情や舞台裏については訳者あとがきに詳し…