2010-07-01から1ヶ月間の記事一覧

裏切りの峡谷/メグ・ガーディナー(集英社文庫)

イギリスのみで出版されていたデビュー作の『チャイナ・レイク』が、七年目の昨年になってやっと母国アメリカでの出版がかない、めでたくエドガー賞(最優秀ペイパーバック部門)まで受賞してしまったメグ・ガーディナーだが、『裏切りの峡谷』はその彼女の…

我らの罪を許したまえ/ロマン・サルドゥ(河出書房新社)

エーコの『薔薇の名前』がわが国に紹介され、歴史ミステリが大きな脚光を浴びたのはすでに二十年前のことだけれど、久し振りにあの名作と肩を並べる作品が登場した。フランスの新星ロマン・サルドゥのデビュー作『我らの罪を許したまえ』である。 十三世紀末…

悪魔パズル/パトリック・クェンティン(論創社)

翻訳紹介されない作品にはそれなりの理由があるものだ、とも言われるけれど、ことパトリック・クェンティンに関しては当て嵌まらない。五年前に『悪女パズル』、三年前には『グリンドルの悪夢』と、実にのんびりしたペースではあるが優れた作品の紹介が進む…

英雄たちの朝(ファージング1)/ジョー・ウォルトン(創元推理文庫)

世界幻想文学大賞受賞作家ジョー・ウォルトンの『英雄たちの朝』だが、この作品は歴史改変ものの三部作〈ファージング〉のパート1にあたる。第二次大戦で敵方のナチとの間に講和条約を結び、名誉ある和平を享受している終戦から九年がたったイギリスが舞台…

さよならまでの三週間/C・J・ボックス(ハヤカワミステリ文庫)

「沈黙の森」に始まるワイオミング州の猟区管理官ジョー・ピケットものも決して悪い出来ではなかったが、シリーズ外の「ブルー・ヘブン」がエドガー賞に輝いたことで箔がついたか、C・J・ボックスという作家に改めて注目が集まっているようだ。そしてその…