500-01-01から1年間の記事一覧

ココデナイ ドコカ/島村洋子(祥伝社文庫)

島村洋子の短編小説には、天才の閃きがあると常々思っているが、『ココデナイ ドコカ』も、やはり短編の名手の名に恥じない作品が揃っている。ひとつひとつの作品は、わずか三十ページ余りだが、そこには登場人物たちの生き方の断面が投影されているし、何よ…

ありったけの話/中山智幸(新潮社)

誰が呼んだか、パラパラ漫画。教科書の余白に、アニメーションの原理で動く絵を落書きした小学生時代の経験を、誰もが持っていると思う。その懐かしいパラパラ漫画が付いてくるというなんともユニークな『ありったけの話』は、三年前に「さりぎわの歩き方」…

犬身/松浦理英子(朝日文庫)

松浦理英子の久々の長篇『犬身』は、犬づくしの小説である。ローカルなタウン誌の編集の仕事で生計をたてる房江は、子どもの頃から漠然と犬にあこがれる人生を歩んできた。そんな彼女の目にとまった、雑種犬を飼うひとりの女性。街中ですれ違う度に、房江の…