弱気な死人/ドナルド・E・ウェストレイク(ヴィレッジブックス)

ドナルド・E・ウェストレイクの『弱気な死人』は、別名義のJ・J・カーマイクルで発表された作品のようだが、この作家のコメディ・センスが炸裂した痛快な作品といっていいだろう。バリーとローラのおしどり夫婦は、ある時金策が尽き、保険金詐欺を企む。妻の親族を頼って、南米の小国で事故を装うが、小さな綻びから、バリーは逃亡の身に。しかし、彼はその行く先々で予期せぬ不運に見舞われていく。
近年(2002年)のリリースとあって読み心地はフレッシュだ。大きなトリックや、強烈なサスペンスがあるわけではないが、クライム・コメディのお手本のようなお話のころがしで、読者を巻き込んでいく。
[本の雑誌2005年10月]

弱気な死人 (ヴィレッジブックス)

弱気な死人 (ヴィレッジブックス)