ミステリーズ 運命のリスボン/ラウル・ルイス監督(2012・葡仏)


よくボヤいているように、長い映画は苦手だけど、ミステリ映画だという触れ込みだし、おまけにこの邦題とあっては、観ないわけにはいかない。すなわち、〈ミステリーズ 運命のリスボン〉。南米チリ出身の巨匠ラウル・ルイス作品で、この映画の公開後に監督は亡くなっているので、実質的な遺作となってしまった。十九世紀前半のポルトガルの首都リスボン。孤児のジョアンは、出生の秘密を抱えながら、修道院で寄宿生活を送っていた。あるとき、ディニス神父の計らいで実母に会いにいくが、伯爵夫人でありながら母親が不幸な境遇にあることを知る。伯爵が家を空けている間に、神父は彼女を連れ出し、ジョアンは母親との暮らしを手に入れる。しかし、それも続かず、またも数奇な運命が彼を待ち受けていた。
上映時間は四時間二十六分。前編と後編で短い休憩を挟んでの上映だった。どうやら原作があるらしく、作者のカミロ・カステロ・ブランコはポルトガルバルザックと呼ばれているらしい。なるほど、映画からもサーガとも呼ぶべき大きな物語の絵柄全体を俯瞰するスケールと、その細部をきっちりと描写する緻密さの両面性を備えた物語であることがわかる。複雑な人間模様を解きほぐしていくようなつくりで、人と人との思いがけない繋がりが次々と明らかになっていく展開は、シドニー・シェルダン調の大河ロマンスを思い浮かべてもらえば、当たらずとも遠からずといったところか。ミステリとしての興趣はやや希薄だが、意外性を織り込みながら四時間半を飽かさず見せるストーリーテラーぶりには感心させられる。
日本推理作家協会報2013年1月号]
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