2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

三十三本の歯/コリン・コッタリル(ヴィレッジブックス)

CWA賞の最優秀長編部門候補にもなった前作の翻訳紹介から早く四年が経とうとしているが、コリン・コッタリルの『三十三本の歯』はインドシナ半島の東寄りに位置する国ラオスを舞台に、齢七十二を数える老検死官シリ・バイブーンが大活躍するシリーズの待…

裁きの曠野/C・J・ボックス(講談社文庫)

単発の『ブルー・ヘブン』でエドガー賞に輝いているC・J・ボックスだが、デビュー作以来の読者には、ワイオミング州猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズの方に愛着をおぼえる向きもあるだろう。『裁きの曠野』は、シリーズの数えて第六作(一作未訳あり…

王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件/ツイ・ハーク監督(2010・香)

ディー判事(狄仁傑)といえば、ミステリの読者にはおなじみ、在日オランダ大使だったこともあるロバート・ファン・ヒューリックが七世紀の中国(唐代)を舞台に描いた連作シリーズの主人公だが、この名探偵には実在のモデルがいた。ヒューリックの小説が描…

捜査官X/ピーター・チャン監督(香中・2011)

ピーター・チャン監督の『捜査官X』だが、ドニー・イェン演じる謎めいた男が、クララ・ウェイ、ジミー・ウォングといったクンフー・スターのツワモノたちを向こうに回して堂々と渡り合っていく後半は、武任映画として息を呑む出来映えだ。しかし、ミステリ…

私が、生きる肌/ティエリー・ジョンケ(ハヤカワミステリ文庫)

八年前に翻訳紹介されるや、〈このミス〉の年間ランキングにもくい込んだティエリー・ジョンケの「蜘蛛の微笑」だが、新装版の『私が、生きる肌』(ハヤカワ文庫)として再登場した。昨年、〈オール・アバウト・マイ・マザー〉でおなじみの巨匠ペドロ・アル…