最高の悪運/ドナルド・E・ウェストレイク(ハヤカワ文庫)

現代ミステリのシーンの貴重なアルチザン作家の中でも、最長老格にあたるドナルド・E・ウェストレイクの『最高の悪運』という作品。お馴染みドートマンダー・シリーズの新作である。盗みに入ったつもりが、逆に自分の指輪を盗まれてしまったドートマンダーは、傷ついたプライドを抱えて、指輪の奪還に乗り出す。しかし、それが思うようにすすまずに・・・、というのが今回のお話。
今回の読みどころは、なんといっても「ホット・ロック」以来のドートマンダーの仲間達が、一堂に会するというオールスター・キャストだろう。<悪党パーカー>シリーズの「殺戮の月」のドートマンダー版だと思ってもらえればいい。しかし、本作の読みどころは、顔ぶれの豪華さや懐かしさだけに留まらない。いかにも、このシリーズらしい抱腹絶倒の展開が用意されているのだ。その最もたるものは、相次ぐ失敗で、予期しない結果を生み出していく奪還計画である。このアイデアだけとっても大笑いできるし、ウェストレイクの非凡さを十分に堪能できる。
本の雑誌2000年7月号]

最高の悪運 (ミステリアス・プレス文庫)

最高の悪運 (ミステリアス・プレス文庫)