天から降ってきた泥棒/ドナルド・E・ウェストレイク(ミステリアス・プレス文庫)

ドートマンダー・シリーズといえば、つい何年か前にレンタルヴィデオ屋でクリストファー・ランバートがドートマンダーを演じる「ホワイ・ミー?」を見つけて思わず小躍りした記憶がある。ドナルド・E・ウェストレイクの『天から降ってきた泥棒』は、シリーズの翻訳としてはなんと十四年ぶりのカムバックになるという。
ひょんなことから鉄壁の防御を誇る超高層ビルに閉じ込められた修道女を救出するというユニークな仕事を請け負うこととなったドートマンダー。行きがけの駄賃にと、ビルのテナントから宝石類を盗むことを画策し、ケルプ以下のお馴染みの面々を招集する。
抱腹絶倒のハプニングが連発し、物語が意外な展開を遂げるという定石どおりの展開が心地よい。例によって、シリアスな強奪計画とスラップスティックな笑いの混ざり具合が絶妙だ。著作リストを眺めれば、シリーズには未訳があと四編もあるではないか。すみやかな翻訳紹介を切に望む。
本の雑誌1997年9月]

天から降ってきた泥棒―ドートマンダー・シリーズ (ハヤカワ文庫―ミステリアス・プレス文庫)

天から降ってきた泥棒―ドートマンダー・シリーズ (ハヤカワ文庫―ミステリアス・プレス文庫)