2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ファルコン賞はS・J・ローザン

マルタの鷹協会日本支部が主催するファルコン賞の今年の受賞作が決まりました。ジェイムズ・リーズナーの「聞いてないとは言わせない」などとデッドヒートを繰り広げた結果*1、S・J・ローザンの「冬そして夜」が見事栄冠に輝きました。 「冬そして夜」は、中国系…

死神を葬れ/ジョシュ・バゼル(新潮文庫)

フランクフルトで毎年開催される秋のブックフェア(書籍見本市)は、各国の出版事業者が集い、新作や話題作の出版権をめぐって争奪戦を繰り広げる場として世界最大規模のものだが、二年前そこで話題を独占したのが、この無名の新人作家による『死神を葬れ』…

灰色の嵐/ロバート・B・パーカー(早川書房)

ジェラール・ド・ヴィリエの〈プリンス・マルコ〉が170冊、さらにドン・ペンドルトン他の〈マック・ボラン〉に至っては360冊を越えるというのだから、シリーズものの最長不倒記録には遠く及ばないが、しかしロバート・B・パーカーのスペンサーものの長…

人生に乾杯!/ガーボル・ロホニ監督(2007・洪)

この作品を取り上げたのはこじつけに非ず。ハンガリーからやってきたガーボル・ロホニ監督の『人生に乾杯!』は、立派なミステリ映画である。五十年間連れ添ったエミル・ケレシュとその妻テリ・フェルディだが、何かと物入りの昨今、収入が年金だけとあって…

ベツレヘムの密告者/マット・ベイノン・リース(ランダムハウス講談社文庫)

西は地中海、東はヨルダン川。シリアやエジプト等と国境を接する面積約2万7000平方キロに及ぶ南北縦長の地パレスチナを舞台に新シリーズを立ち上げたのが、タイム誌の支局長を経験し、作家に転身した今もエルサレムに居を構えるイギリス作家マット・ベ…

凍てついた墓碑銘/ナンシー・ピカード(ハヤカワ文庫)

ここのところ、とんとご無沙汰のナンシー・ピカードだが、久々の『凍てついた墓碑銘』は、2007年のエドガー賞の最終候補にまで残った作品。残念ながら、ジェイソン・グッドウィンの『イスタンブールの群狼』に受賞の栄誉は譲ったが、アガサ賞、マカヴィ…

ガイ・リッチーが描くシャーロック・ホームズ

マドンナと離婚、撮る映画の評判もいまひとつというガイ・リッチー(『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』、『スナッチ』)だが、ロバート・ダウニー・Jrがホームズを演じる「シャーロック・ホームズ」を製作中とのこと。ちなみにワトスン役…

秋のリバイバルあれこれ

あちこちで名作復活の動きがあるようなので、まとめてご案内を。 ハヤカワ・ミステリ文庫からは、極上のコージー・ミステリであるクレイグ・ライスの「スイートホーム殺人事件」が羽田詩津子の新訳で登場する。また、文春文庫海外部門の黎明期に話題となった…

蛹令嬢の肖像/ヘザー・テレル(集英社文庫)

ナチスの美術品掠奪をテーマに、十七世紀、第二次大戦下、そして現代と三つの時代の物語がロマンチックな絵柄を織り成していくヘザー・テレルの『蛹令嬢の肖像』。「ダ・ヴィンチ・コード」をお手本にしたような既視感はあるものの、読者を飽かさないスピー…

謀略法廷/ジョン・グリシャム(新潮文庫)

ジョン・グリシャムは、新作の『謀略法廷』でも、いまだ衰えない社会派としての意欲をうかがわせる。農薬工場が引き起こした水質汚染をめぐる公害訴訟で原告側に立った弁護士夫妻は、私財をなげうち、やっとのことで勝訴に漕ぎ着けた。しかし、被告の企業側…

久々にドン・ウィンズロウが出ます

途中に、ポール・ウォーカー主演の映画「ボビーZ」(原作はもちろん「ボビーZの気怠く優雅な人生」)の公開とかはありましたが、ドン・ウィンズロウの作品が翻訳紹介されます。2006年8月にニール・ケアリーものの番外編「砂漠で溺れるわけにはいかない」が出…

リンカーン弁護士/マイクル・コナリー(講談社文庫)

司法制度における問題点のさまざまを浮き上がらせ、活発な議論を呼び起こしているわが国の裁判員制度だが、リーガル・フィクションの分野でも、そんなご時勢にお誂え向きの問題作が続々と紹介されている。 マイクル・コナリーの『リンカーン弁護士』もそのひ…

匿名投稿/デブラ・ギンズバーグ(扶桑社海外文庫)

日本で作家がデビューするには新人賞に応募する場合が多いようだが、アメリカの作家の卵たちはもっぱら出版エージェントに原稿を持ち込むという。小説は本作が初というデブラ・ギンズバーグの『匿名投稿』は、このアメリカで出版界を牛耳る出版エージェント…

静かなる天使の叫び/R・J・エロリー(集英社文庫)

三十年以上にわたって、ひとりの男が辿る魂の軌跡を描く年代記。R・J・エロリーの『静かなる天使の叫び(上・下)』(集英社文庫)は、そう呼ぶに相応しい風格と読み応えをそなえている。ジョージア州の田舎町を舞台に、少女ばかりを手にかけるシリアルキラ…

花組芝居版の「ナイルに死す」

この秋、小劇場系の老舗である花組芝居が、『ナイルの死神』と題して、クリスティの「ナイル殺人事件」を上演します。会場と日程は、東京が俳優座劇場にて10月23日から11月1日まで、神戸が新神戸オリエンタル劇場で、11月7日と8日の両日を予定しているようで…

新・幻想と怪奇/仁賀克雄編(ハヤカワ・ミステリ)

都筑道夫の「ポケミス全解説」をひもとくと、彼の編纂で昭和三十一年に刊行された『幻想と怪奇(1)(2)』の思い入れたっぷりな、編者あとがきを兼ねた編集部M名義の解説も収録されていて、故人がこの分野に対して並々ならぬ情熱を抱いていたことが伺われるが…

トム・ロブ・スミスの第二作が出ます

デビュー作の『チャイルド44』を引っさげ、昨年の「このミステリーがすごい」の海外部門で一位の座に輝いたイギリスの新鋭作家トム・ロブ・スミスの第二作が出ます。 タイトルは『グラーグ57』(原題は The Secret Speech)で、前作『チャイルド44』の後日…