ノワール

荒涼の町/ジム・トンプスン(扶桑社海外文庫)

ここのところの地道な翻訳紹介によって、犯罪小説の巨匠ジム・トンプスンの全貌が明らかになりつつあるのは嬉しいことだ。新訳の『荒涼の町』は、なんと「おれの中の殺し屋」の問題の人物ルー・フォードが、再び読者の前に登場する。 テキサスの田舎町に、前…

深夜のベルボーイ/ジム・トンプスン(扶桑社)

かつてはスティーヴ・マックイン主演の映画の原作として刊行された「ゲッタウェイ」と「内なる殺人者」くらいしか読めなかったジム・トンプスンだが、ここのところぽつりぽつりと翻訳も増え、ようやくこの伝説の作家から幻という謎めいたベールが剥がれつつ…

失われた男/ジム・トンプスン(扶桑社海外文庫)

ジム・トンプスンの「死ぬほどいい女」は、「内なる殺人者」(「おれの中の殺し屋」)とは別の意味でトンプスンという作家の代表作だと思っているが、『失われた男』もそれと同年の一九五四年に上梓されている。 主人公のブラウニーは、アルコールに溺れる日…

死神を葬れ/ジョシュ・バゼル(新潮文庫)

フランクフルトで毎年開催される秋のブックフェア(書籍見本市)は、各国の出版事業者が集い、新作や話題作の出版権をめぐって争奪戦を繰り広げる場として世界最大規模のものだが、二年前そこで話題を独占したのが、この無名の新人作家による『死神を葬れ』…