ファルコン賞はS・J・ローザン

マルタの鷹協会日本支部が主催するファルコン賞の今年の受賞作が決まりました。ジェイムズ・リーズナーの「聞いてないとは言わせない」などとデッドヒートを繰り広げた結果*1S・J・ローザンの「冬そして夜」が見事栄冠に輝きました。
「冬そして夜」は、中国系アメリカ人のリディア・チンと大男の白人男性ビル・スミスのコンビが交互に主役をつとめるシリーズの数えて8作目で、シリーズの最高作ともいうべき作品。ローザンは、この作品で大きなマイルストンを打ち立てたが、その後、長らくシリーズから遠ざかっていた。しかし、今年になってやっと7年ぶりの新作となる「The Shanghai Moon」を本国で上梓しました。
ちなみに、マルタの鷹協会は、ハードボイルド小説の愛好者の集まりで、1981年にサンフランシスコにて、私立探偵のジェイスン・ウェクター、作家のドン・ヘロンの両氏が創立したが、現在は休眠中。アメリカ本国に遅れること1年、日本支部が創設され、こちらは息長く活動を続けています。
ファルコン賞は、このマルタの鷹協会日本支部が、その前年にわが国で刊行されたもっとも優れたハードボイルド作品に対して授与するもので、会員の投票によって決められる。受賞者には賞状と「丸太の鷹」(山形県の木彫りのオブジェ)が贈呈されます。過去の受賞作はこちら
なお、S・J・ローザンの作品リストは下記のとおり。特記ないものは、すべてリディア・チンとビル・スミスのシリーズで、邦題ある作品は、すべて直良和美訳にて、創元推理文庫から刊行されています。

  • China Trade (1994) 『チャイナ・タウン』
  • Concourse (1995) 『ピアノ・ソナタ
  • Mandarin Plaid (1996) 『新生の街』
  • No Colder Place (1997) 『どこよりも冷たいところ』
  • A Bitter Feast (1998) 『苦い祝宴』
  • Stone Quarry (1999) 『春を待つ谷間で』
  • Reflecting the Sky (2001) 『天を映す早瀬』
  • Winter and Night (2002) 『冬そして夜』
  • In the Rain (2006) *ノンシリーズ作品
  • The Shanghai Moon (2009)

冬そして夜 (創元推理文庫)

冬そして夜 (創元推理文庫)

*1:ちなみに2位以下は、2位『聞いてないとは言わせない』ジェイムズ・リーズナー、3位『チャイルド44トム・ロブ・スミス、4位『哀国者』グレッグ・ルッカ、5位『変わらぬ哀しみは』ジョージ・P・ペレケーノス、6位『アメリカン・スキン』ケン・ブルーウン、7位『フロスト気質』R.D.ウィングフィールド、8位『鎮魂歌は歌わない』ロノ・ウェイウェイオール、9位『ザ・ロードコーマック・マッカーシー