静かなる天使の叫び/R・J・エロリー(集英社文庫)

三十年以上にわたって、ひとりの男が辿る魂の軌跡を描く年代記。R・J・エロリーの『静かなる天使の叫び(上・下)』(集英社文庫)は、そう呼ぶに相応しい風格と読み応えをそなえている。ジョージア州の田舎町を舞台に、少女ばかりを手にかけるシリアルキラーと、デモーニッシュな事件の悪夢にとり憑かれてしまった少年の数奇な運命が語られていく。
ひとことで言えば、鬼畜な犯罪を描くサイコスリラーだが、執拗な描写と印象的な場面のめくるめく展開は、作者もリスペクトを捧げるというスティーヴン・キングに迫るものがあるし、カポーティの「冷血」を思い起こす向きもあるだろう。夏の読書にふさわしい、読者の背筋を凍らせることうけあいの一冊だ。
[波2009年7月号]

静かなる天使の叫び (上) (静かなる天使の叫び) (集英社文庫)

静かなる天使の叫び (上) (静かなる天使の叫び) (集英社文庫)

静かなる天使の叫び (下) (静かなる天使の叫び) (集英社文庫)

静かなる天使の叫び (下) (静かなる天使の叫び) (集英社文庫)