蛹令嬢の肖像/ヘザー・テレル(集英社文庫)

ナチスの美術品掠奪をテーマに、十七世紀、第二次大戦下、そして現代と三つの時代の物語がロマンチックな絵柄を織り成していくヘザー・テレルの『蛹令嬢の肖像』。「ダ・ヴィンチ・コード」をお手本にしたような既視感はあるものの、読者を飽かさないスピーディな展開で読ませるし、その底流にある家族の絆の物語もいい。欲を言えば、若き弁護士マーラというヒロインの存在感がもう少し鮮明だといいのだが。
本の雑誌2009年7月号]

蛹令嬢の肖像 (集英社文庫)

蛹令嬢の肖像 (集英社文庫)