秋のリバイバルあれこれ

あちこちで名作復活の動きがあるようなので、まとめてご案内を。
ハヤカワ・ミステリ文庫からは、極上のコージー・ミステリであるクレイグ・ライスの「スイートホーム殺人事件」が羽田詩津子の新訳で登場する。また、文春文庫海外部門の黎明期に話題となった異色のリーガル、ヘンリー・デンカーの「復讐法廷」が復活。ほかに、ハメット自身の事件ともいうべきジョー・ゴアズの名編「ハメット」(旧角川文庫)、ティーヴン・L・トンプスンによる冒険小説シリーズの第一作「A10奪還チーム出動せよ」(旧新潮文庫)もあわせてカムバックする。
創元推理文庫からは、待望のヘレン・マクロイ「幽霊の2/3」が、駒月雅子の新訳で。この作品は、「殺す者と殺される者」とともに、同文庫で実に長い間絶版だったものだが、先に行われた〈文庫創刊50周年記念復刊リクエスト〉の読者投票で一位となって、この復刊が実現した。なお、「殺す者と殺される者」も追って復刊される予定となっているようだ。(蛇足になるが、この際なので、「暗い鏡の中に」のカムバックも、早川書房にお願いしたい)
また、小学館文庫が再々映画化にあわせて出したジョン・ゴーディの「サブウェイ123激突」(伏見威蕃訳)は、35年前に早川ノヴェルズで出た「サブウェイ・パニック」(村上博基訳)の新訳版。ジョセフ・サージェントが監督した映画は、ウォルター・マッソーとロバート・ショーがしのぎを削る切れのいい犯罪映画だったが、トラボルタを担ぎ出したトニー・スコット版やいかに。
最後は、リバイバルというほど古い作品ではないが、晶文社から出て、その年の「このミス」でベストワンを獲得したジャック・リッチーの「クライム・マシン」河出文庫に収録される。今回の文庫化にあわせて、「記憶よ、さらば」が新収録となる。また晶文社版に入っていたカーデュラ・シリーズの4篇は今回割愛されるが、改めて「カーデュラ探偵社」 として刊行の予定があるそうなので、お楽しみに。