裏切りの戦場 葬られた誓い/マチュー・カソヴィッツ監督(2011・仏)


ナポレオン三世が領有を宣言した十九世紀からフランスの統治下にあったニューカレドニアの小さな島で、自国の独立を求める現地住民のグループが、フランス人憲兵たちを人質に森の洞窟に立て籠もった。知らせを受け、ヴェルサイユから駆けつけた国家憲兵隊治安部隊のリーダーで大尉のマチュー・カソヴィッツは、相手方と接触するも交渉に失敗し、自らも囚われの身となってしまう。しかし独立派のリーダー格であるイアベ・ラパカを説得し、事件を平和的な解決に導こうとフランス政府との間の連絡役を買って出るが。
アメリ〉や〈フィフス・エレメント〉などの出演作もある、〈クリムゾン・リバー〉のマチュー・カソヴィッツ監督による〈裏切りの戦場 葬られた誓い〉は、フランス政府も全面否定する史実の掘り起こしに、長い歳月が費やされたという。折りからフランス国内に持ち上がっていたミッテラン大統領とシラク首相が真っ向から対立する深刻な政治状況に、独立派の願いと主人公大尉の思惑が無情にも踏みにじられていく過程が、刻々と描かれていく。十日間の出来事の悲劇的な結末は最初のシーンにあるし、そもそも史実なのだから、物語の帰結は容易に予想がついてしまう。しかし、それでいてタイムリミットに向けての時間の流れに強烈なサスペンスを感じるのは、国家の失敗がどこにあったかという問題を徹底して検証しようとする製作サイドの真相究明に対する熱意から生まれているに違いない。全編が主人公の目を通して描かれるが、彼の無念さがいつまでも苦い余韻となって残る作品だ。
日本推理作家協会報2013年12月号]
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