ゲットバック/サイモン・ウェスト監督(2012・米)


タイトルから連想されるのはビートルズのナンバーだが、強盗仕事にかかる直前に主人公がゲンを担いで聴き入る音楽はCCRの「ボーン・オン・ザ・バイユー」。そんなプロフェッショナルをニコラス・ケイジが演じる〈ゲットバック〉は、1997年の〈コン・エアー〉以来のコンビとなるサイモン・ウェスト監督作品だ。8年前の強盗事件で服役し、いったんは足を洗ったニコラス・ケイジを再び悪事に向かわせたのは、逆恨みから愛娘のサミ・ゲイルを誘拐し、大金を要求してきたかつての共犯者ジョシュ・ルーカスだった。事態に戸惑いながらも、昔の仲間で彼に好感を寄せるマリン・アッカーマンとともに、昔取った杵柄で強盗仕事に手を染めることに。
ややお手軽感のあるクライムものだが、最近も〈エクスペンダブルズ2〉でその達者な職人芸を披露したばかりのサイモン・ウェストの演出は実に軽快。やや緩めのプロットも、随所に小ネタがちりばめられているので、最後まで飽かせない。ちょっと褒めすぎかもしれないが、ドナルド・E・ウェストレイクのクライムコメディを映画にする際のお手本は、こんな感じといえるのではないか。主人公らを追う脇役のダニー・ヒューストンとマーク・バレーのFBI捜査官コンビもいい味を出している。
日本推理作家協会報2012年12月号]
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