無罪INNOCENT/スコット・トゥロー(文藝春秋)

連邦検察局在籍時代に書いた『推定無罪』でスコット・トゥローに注目が集まったのは一九八七年。少し遅れてデビューした『ザ・ファーム/法律事務所』のグリシャムらとともに、リーガル・スリラーの分野を牽引したのは、今から四半世紀近くも前のことになる。『無罪INNOCENT』は、その名作『推定無罪』の二十年後の物語である。
不倫関係にあった同僚を殺したとして法廷闘争の渦中におかれたサビッチも六十歳を迎え、州上訴裁判所の主席判事の職についている。目前の州最高裁判事選でも当選が確実視されていたが、突如として窮地に立たされる。妻のバーバラが変死を遂げ、殺人容疑を掛けられたのだ。サビッチは、かつての恩人サンディにまたも弁護を依頼する。
いまや検事局のトップとなった宿敵トミー・モルトとの火花散る法廷シーンもあるが、印象的なのは彼らの考える?法の正義?が明らかになっていく過程だろう。期せずして再び相まみえた二人は、それぞれに人生の年輪を重ね、人間として深みを増した存在として登場する。作者の円熟の境地をうかがわせる感動の続編といえよう。
このミステリーがすごい!2013]

無罪 INNOCENT

無罪 INNOCENT