コンフィデンスマン ある詐欺師の男/デイヴィッド・ウィーヴァー監督(2011・米)


やたらと多いサミュエル・L・ジャクソンの出演作だが、しかしこの顔を出演者の中に見つけると、妙に期待感のようなものが湧いてくるから不思議なものだ。デイヴィッド・ウィーヴァー監督の『コンフィデンスマン ある詐欺師の男』で彼が演じるのは、友人を殺し、二十五年にわたる禁固刑を終えたばかりの人物だ。窮地を救ったことから親しくなった娘ルース・ネッガと平穏な暮らしを送ろうとするが、かつての相棒で自分が殺した親友の息子ルーク・カービーは、彼を再び悪の道へと引き戻そうと執拗に画策し、ついには詐欺の計画に引きずり込んでしまう。
中盤に主人公を襲う衝撃の事実は、観客をも打ちのめすが、やがて後のシーンで、登場人物のひとりから発せられる思いがけないひと言が、物語を反転させるバネの役割を果たしていく。ミステリ映画の仕掛けとして機能するだけでなく、強く生きてこその人生という、ポジティブなメッセージが伝わってくる印象的な一場面だ。暗いノワール色に覆われた本作に、ほのかにさしこむ希望の光が、エンドマークが出たあとも余韻として残るいい作品だと思う。
日本推理作家協会2012年12月号]
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