逆転立証/ゴードン・キャンベル(RHブックス・プラス)

一方が法廷推理ブームの礎「推定無罪」の続編『無罪』で読者を驚かせたかと思えば、片やいきのいい新作『自白』で応酬。S・トゥローとJ・グリシャムの重鎮が揃って気を吐くリーガルスリラーの分野が元気だが、もう一人注目の新人が登場した。六十五歳のデビューは遅咲きだが、三十年かけたというゴードン・キャンベルの『逆転立証(上・下)』は、法律家としての侮れないキャリアと、人生の年輪を窺わせる読みごたえだ。
容疑者は被害者の妻と娘の二人だけという事件で、夫殺しの疑いがかかった被告の弁護を名うての弁護士モーガンが引き受けた。助手となった駆け出しの主人公は、モーガンの法廷戦術を手伝い、公判は有利に進んでいくが。ややもすると、正義の実現よりは、弁護側と検察側の一騎打ちに見える裁判制度の陥穽がテーマだ。一粒で二度美味しい面白さともあいまって、エドガー賞の新人賞部門ノミネートもなるほどと頷ける力作である。
[波2013年1月号]

逆転立証 上 (RHブックス・プラス)

逆転立証 上 (RHブックス・プラス)

逆転立証 下 (RHブックス・プラス)

逆転立証 下 (RHブックス・プラス)