SF

リアル・スティール/リチャード・マシスン(ハヤカワ文庫NV)

「アイ・アム・レジェンド」、「運命のボタン」と、依然映画の原作人気も衰えないリチャード・マシスンだが、前々から噂のあった「四角い墓場」もスピルバーグのドリームワークスにより映画化され、日本でも正月映画として公開された。それに合わせて、映画…

奇跡なす者たち/ジャック・ヴァンス(国書刊行会)

ジャック・ヴァンスといえば、SFの世界では数多のリスペクトを集めるカリスマ作家だが、実はミステリとの縁も浅からぬものがあって、『檻の中の人間』でエドガー賞の処女長編賞を獲っているし(本名のジョン・ホルブルック・ヴァンス名義)、エラリー・ク…

バッド・モンキーズ/マット・ラフ(文藝春秋)

マット・ラフは、もともとSF読者の間ではスリップストリーム系の風変わりな作家として注目されてきた人のようだが、『バッド・モンキーズ』は、ミステリ・ファンにも十分対応可能な痛快なアクション小説である。矯正不能の悪者たち(すなわちバッド・モン…

レポメン/エリック・ガルシア(新潮文庫)

恐竜探偵シリーズの生みの親エリック・ガルシアの『レポメン』は、人工臓器が発達し、高価の臓器を買うためにはローンが一般化している近未来が舞台。主人公は、ローン滞納者からメスを使って手荒に臓器を回収する腕利きの取立屋(レポメン)だったが、ある…

木でできた海/ジョナサン・キャロル(創元推理文庫)

ジョナサン・キャロルの作品では、「蜂の巣にキス」、「我らが影の声」、「死者の書」がマイ・フェイバリットというと、ああ、やはり根っからのミステリ・ファンだね、と思われそうだが、とことん個性的でファンタスティックな彼の作風も実は嫌いじゃない。…

ユダヤ警官同盟/マイケル・シェイボン(新潮文庫)

歴史改変というテーマがある。SFでいうパラレルワールドもののひとつで、ある歴史上の分岐点を境に、そこから史実とは異なる経過をたどっていくイフの世界の物語を指してそう呼ぶわけだが、なぜかその起点となる分け目を二次世界大戦に求める例が多い。日…

ザ・ロード/コーマック・マッカーシー(早川書房)

昨年の積み残しから。キングの『ザ・スタンド』が疫病の流行、マキャモンの『スワン・ソング』が核戦争の勃発と、小説の中で描かれる世界の終わり方も色々だが、コーマック・マッカーシーの『ザ・ロード』をひもとく読者も、最初は主人公親子の行く手に広が…