2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧

道化の死/ナイオ・マーシュ(国書刊行会)

クラシック・ミステリのリバイバルの流れに、その牽引車として大きな役割を果たした国書刊行会の〈世界探偵小説全集〉が、ついに完結した。ときに老舗の創元推理文庫やハヤカワ・ミステリをもリードする慧眼なセレクトで、思わずため息の出るようなラインナ…

道化の町/ジェイムズ・パウエル(河出書房新社)

ジェイムズ・パウエルの『道化の町』は、ジャック・リッチーやロバート・トゥーイなど、一連の短編作家再評価の流れを組む一冊といっていいだろう。知名度では先発組に劣るかもしれないが、個性派という点ではミステリ界を眺め渡しても、パウエルほどの作家…

聖者は口を閉ざす/リチャード・プライス(文藝春秋)

「フリーダムランド」以来、久々の紹介となるリチャード・プライスの『聖者は口を閉ざす』。ミステリというより、物語の中心に謎を据えた普通小説というべきかもしれないが、その謎はなかなか魅力的だ。主人公のレイは、ある日自宅で何者かに殴打され重傷を…

変わらぬ哀しみは/ジョージ・P・ペレケーノス(ハヤカワミステリ文庫)

ここのところの不調続き(悪い作品ではないが、「魂の眠れ」や「ドラマ・シティ」はいまひとつの印象だった)で、作家としての曲がり角にさしかかっているのでは、とちょっと心配だったジョージ・P・ペレケーノスだけれど、『変わらぬ哀しみは』は、デレク…

古城ホテル/ジェニファー・イーガン(ランダムハウス講談社)

長篇小説は五年に一冊という、寡作な作家ジョニファー・イーガン。デビュー作の「インヴィジブル・サーカス」は、キャメロン・ディアス主演で映画(邦題「姉のいた夏、いない夏」)にもなったので、ご存知の向きもあるだろう。『古城ホテル』は、二○○六年に…