変わらぬ哀しみは/ジョージ・P・ペレケーノス(ハヤカワミステリ文庫)

ここのところの不調続き(悪い作品ではないが、「魂の眠れ」や「ドラマ・シティ」はいまひとつの印象だった)で、作家としての曲がり角にさしかかっているのでは、とちょっと心配だったジョージ・P・ペレケーノスだけれど、『変わらぬ哀しみは』は、デレク・ストレンジものとして、スタイルも出来映えも、そんな読者の意表をつく一作。いわばシリーズの番外編なのだが、物語は少年時代、さらには警察官時代のデレクが登場する二部構成となっている。
なんといっても素晴らしいのは、多感な少年の頃から、人間としての誇り、そして家族への思いが凛として伝わってくる主人公デレクの生き方だ。それはやがて夢がかなって警察官の仕事に就いてからも、最後の最後まで貫き通される。人種問題をめぐって揺れるアメリカの激動の六十年代を背景に納めた時代の捉え方も見事。本作が、今後のペレケーノスの新たなステップボードとなってくれることを願ってやまない。
[本の雑誌2008年7月号]

変わらぬ哀しみは (ハヤカワ・ミステリ文庫)

変わらぬ哀しみは (ハヤカワ・ミステリ文庫)