「未完のモザイク」ジュリオ・レオーニ(二見文庫)

錬金術占星術といった中世イタリアのペダントリーをふんだんに盛り込んだジュリオ・レオーニの『未完のモザイク』は、のちに「神曲」を生む若き日のダンテが探偵役として登場する歴史ミステリである。教会の工事現場で奇妙な死体となって見つかったモザイクの名工の死をめぐり、フィレンツェの執政官の職についたダンテが謎を解いていくのだが、その展開の面白さも去ることながら、自由都市フィレンツェに魔手を伸ばすローマ教皇とその配下を相手に、借金まみれになりながらも奮闘する若きダンテの活躍がなんとも魅力的。最後に浮かび上がる歴史に股をかけたスケールの大きな構図にも意表をつかれた。
本の雑誌2009年4月号]

未完のモザイク (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

未完のモザイク (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)