TIME/タイム/アンドリュー・ニコル監督(2011・米)


金持ちは長生き、貧乏人は短命。そんな不条理な(とばかりはいえない?)格差が支配する世界を描く『タイム』は、設定はSF(近未来というよりはパラレルワールドか)だが、随所に切れのいいサスペンスが仕掛けられている。科学技術が進み、老化や寿命という問題を克服した人類は、二十五までしか歳をとらなくなった。それと同時に時間は貨幣にとって換わり、富裕層は時間を貯めこみ、貧困層は生きていくため日々時間を稼がねばならない立場に追い込まれている。
ある日のこと、貧困層の若者ジャスティン・ティンバーレイクは、スラム街の酒場でトラブルに巻き込まれかけた富裕層の男を救う。不死であることに絶望していた男は彼に百年以上の時間を託し、自殺を遂げてしまう。物語は、譲り受けた時間と母の死がきっかけとなって、富裕層に殴りこみをかける主人公の姿を追っていくが、人質にとったアマンダ・セイフライドと恋に落ちるラブコメ的な展開や、彼を執拗に追う官憲のキリアン・マーフィからの逃走劇、さらにはギャングのアレックス・ペティファーとの息を呑む決闘シーン(鈴木清順の某作品を思わせる)まであってサービス満点。腕にデジタル時計を埋め込み、その表示がゼロへと近づいていくハラハラドキドキの演出も巧みで、貨幣=時間というアイデアを使いこなした痛快作となっている。
日本推理作家協会報2012年4月号]
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