ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ[新訳版]/ジョン・ル・カレ(ハヤカワ文庫)

先ごろ出た新訳版で『羊たちの沈黙』が若い読者を獲得していると聞くが、こちらも三十七年ぶりのリニューアルで注目されるジョン・ル・カレの『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ[新訳版]』である。アップデートされた名作の再登場に拍手を送るオールド・ファンも多いだろう。
香港での亡命騒動のさ中に浮上したスパイ疑惑は、英情報部〈サーカス〉の首脳部にソ連の二重スパイが潜んでいるというものだった。招請を受けた元情報部員のスマイリーは引退を返上し、もぐら探しに乗り出すが。パッチワークのように語られていく物語は、まさにスパイ・スリラーの温故知新で、その芳醇な香りが行間から漂う。ちなみに本作の映画化で、スマイリーをゲイリー・オールドマンが演じる公開中の映画「裏切りのサーカス」もなかなかの出来映えです。
[波2012年4月号]

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV)

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV)