野蛮なやつら/ドン・ウィンズロウ(角川書店)

饒舌で機知にとんだ語り口は、『ストリート・キッズ』以来、ドン・ウィンズロウの持ち味といっていいだろう。とはいえ、過去を振り返るとそのスタイルは必ずしも一様ではなく、出だしから軽快で乗りのいい新作『野蛮なやつら』でも、またまた新たな語りのマジックを繰り出してみせる。
お話は単純。西海岸はラグーナ・ビーチの空の下、高品質のマリファナを栽培して売りさばく男女三人の若者たちに目をつけたメキシコの麻薬カルテル組織が、脅しに屈しない彼らに対し、拉致誘拐という手段に出る。かくして若者たちの無鉄砲な反撃が始まる。ときにシナリオ調にもなる文体は、まさに犯罪小説の革命で、そこに惚れこんだオリヴァー・ストーン監督が、いち早く映画化したというのも、なるほど納得がいく。
[波2012年4月号]