火焔の鎖/ジム・ケリー(創元推理文庫)

デビュー作『水時計』の洪水迫り来るクライマックスから、一転して今度は記録的な大旱魃で幕があく第二作『火焔の鎖』。お手本はやはり彼の地を舞台にしたブッカー賞作家グレアム・スウィフトの『ウォーター・ランド』(新潮クレスト・ブックス)だろう。しかしジム・ケリーは、本作でもイングランド東部の湿地帯フェンズの気候と風土を背景に、ミステリの黄金時代にリスペクトを捧げる彼ならではのドラマティックな謎解きの物語を繰り広げる。
飛行機の墜落事故に見舞われ、一家でただ一人生き残ったマギーは、その二十七年後、いまわの際に衝撃の事実を告げる。関係者にその波紋が広がる中、ローカル紙の記者ドライデンは、突き動かされるように複雑な事件の渦中へと足を踏み入れていく。身体を張った主人公の活躍もさることながら、昏睡状態の妻が事件に絡んでくる展開が感動の余韻を残す。
[波2012年4月号]

火焔の鎖 (創元推理文庫)

火焔の鎖 (創元推理文庫)