2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

フランクを始末するには/アントニー・マン(創元推理文庫)

右手に奇想、左手には英国流のドライなユーモア。アントニー・マンの『フランクを始末するには』は、読者を面喰わせること必至の作品集である。まずは冒頭に置かれた、相棒が赤ん坊という警官コンビが活躍する「マイロとおれ」に唖然としていただきたい。さ…

青い塩/イ・ヒョンス(韓・2011)

メガホンをとるのは十一年ぶりというイ・ヒョンスン監督の『青い塩』は、『殺人の追憶』で刑事役だったソン・ガンホが、今度は引退したアウトローを演じる。ヤクザの稼業から足を洗い、ソウルからプサンに移り住んだソン・ガンホの目的は、母親の故郷で食堂…

カエル少年失踪殺人事件/イ・ギュマン監督(韓・2011)

韓国では、二○○七年の法改正で殺人事件の公訴時効がそれまでの十五年から二十五年になったが、その見直しのきっかけとなったふたつの重大未解決事件があったという。そのひとつが、『殺人の追憶』(2004)でボン・ジュノが描いた華城近辺で起きた連続強…

サクソンの司教冠/ピーター・トレメイン(創元推理文庫)

すでに歴史ミステリ好きにはおなじみ、アイルランド出身の作家ピーター・トレメインによる〈修道女フィデルマ〉シリーズの『サクソンの司教冠』である。いきなり第五作の『蜘蛛の巣』から紹介が始まったが、シリーズ第二作にあたる本作の翻訳紹介で最初の五…

居心地の悪い部屋/岸本佐知子編(角川書店)

喩えるならば、人の集まるところは苦手なくせに、何かの弾みで出席の返事をしてしまい、気が重いまま顔を出したパーティのようなものだろうか。岸本佐知子編訳の『居心地の悪い部屋』は、そんなアンソロジーである。しかし、気がついてみると、居心地の悪い…

修道院の第二の殺人/アランナ・ナイト(創元推理文庫)

かのイアン・ランキンも折り紙をつけるというイギリスの女性作家アランナ・ナイトは、四十年以上ものキャリアを誇るベテラン作家だ。この『修道院の第二の殺人』が本邦初紹介となる。 一八七○年のエジンバラ、ひとりの罪人の絞首刑が執行された。その前日、…