フランクを始末するには/アントニー・マン(創元推理文庫)

右手に奇想、左手には英国流のドライなユーモア。アントニー・マンの『フランクを始末するには』は、読者を面喰わせること必至の作品集である。まずは冒頭に置かれた、相棒が赤ん坊という警官コンビが活躍する「マイロとおれ」に唖然としていただきたい。さらにそれに続く、男が管理社会に奇妙な復讐を挑む「緑」に不思議な感動をおぼえた読者は、唖然としつつも不思議な世界へと引き込まれていくに違いない。
しめて一ダースの収録作中ハイライトはというと、国民的な大スターを亡き者にしようとする殺害計画とその思いがけない顛末を描いた表題作だろう。CWA賞の最優秀短編賞を授与されたのも十分に頷ける風変わりな犯罪ものだ。それ以外にも喩えようのないオフビートな小品がずらり。かつて乱歩が奇妙な味と呼んだ系譜の末裔が、ここにいる。
[波2012年6月号]

フランクを始末するには (創元推理文庫)

フランクを始末するには (創元推理文庫)