虐待/サンドラ・ラタン(集英社文庫)

作家は成長するものだな、と改めて感心させられたのが、サンドラ・ラタンの『虐待』(集英社文庫)である。カナダのバンクーバー地区を舞台にした警察小説シリーズの第二作にあたる本作は、デビュー作でもあった前作をはるかに凌ぎ、警察小説の新たな可能性すら予感させる。
家庭内暴力が疑われる四歳の男児が撲殺された事件と、一旦は解決した筈の十年前の少女惨殺事件をめぐる新展開。ふたつの事件をめぐって、コクウィットラム連邦警察署の刑事たちの群像劇がドラマチックに繰り広げられる。どうやらTVの連続ものに創作のヒントを得たようで、作者はスピーディな展開で登場人物らの相克と愛憎の物語に読者を引き込んでいく。次作が待ち遠しい期待の連作シリーズである。
(波2011年3月号)

虐待 (コクウィットラム連邦警察署ファイル) (集英社文庫)

虐待 (コクウィットラム連邦警察署ファイル) (集英社文庫)