フロスト気質/R・D・ウィングフィールド(創元推理文庫)
一昨年に惜しまれて世を去ったR・D・ウィングフィールドが遺したフロスト警部シリーズの長編は、死後出版のものを合わせて六編あるが、この『フロスト気質』はその四作目にあたる。残された未紹介作品はわずか二作というのはちょっと寂しいが、初の上下巻、合わせて九○○ページという本作の読み応えあるボリュームは、ファンにとって嬉しいに違いない。
人手不足で当番の署員が悲鳴をあげるハロウィーンの晩のデントン警察署。署長のタバコを失敬するために署に立ち寄ったのが運の尽き。フロスト警部は、たちまち休暇返上を余儀なくされることになった。ゴミの中で少年の死体が見つかり、十五歳の少女が誘拐される事件が発生。ガイフォークスの人形を抱えたまま行方不明になった少年もいるし、幼児ばかりを狙った刺傷事件も続発していた。近隣の警察から、かつての同僚キャシディが応援で呼ばれるが、身内の事件の件でフロストを恨んでいて、署内の空気は穏やかじゃない。しかし、お構いなしに事態は風雲急を告げ、フロストに不眠不休の捜査を強いていく。
失踪や誘拐事件が続発し、それが意外な形で繋がったりしながらモジュラー型の事件ツリーを描いていく展開が今回も見事。冴え渡る(下品な)おやじギャグや、署長との対立で浮かび上がるフロストの男気も従前どおりだが、クライマックスに向けての犯人対フロストの息詰まる一騎打ちが、とりわけ読み応え満点。長さに比例する面白さに、惜しみない拍手を送りたい。
[ミステリマガジン2008年10月号]
- 作者: R.D.ウィングフィールド,R.D. Wingfield,芹澤恵
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2008/07/30
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