雷鳴の夜/ロバート・ファン・ヒューリック(ハヤカワ・ミステリ)

ロバート・ファン・ヒューリックの「真珠の首飾り」が、突然紹介されたのが、2001年の初め。ずいぶんと懐かしい思いに浸らせてもらったが、やや時間をおいて同じシリーズの『雷鳴の夜』が出た。*1どうやら、ポケミスはディー判事ものをシリーズものとして継続的に紹介していくつもりがあるらしい。喜ばしいことだ。
嵐に襲われたディー判事一行は、山の中に佇む大きな寺院に一夜の宿をとった。しかし、やがてその寺では昨今不審死が相次いでいることが判る。怪異現象としか思えない光景を目撃した判事は、寺院に巣くう悪意を暴こうと行動を開始する。これぞ本格といった趣きと古典趣味。これが、古酒の味わいにも似たマイルドな口当たりと深い味わいでブレンドされている。滋味あふれる謎解きと物語の旨みを賞味されたい。
本の雑誌2003年7月号]

雷鳴の夜 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

雷鳴の夜 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

*1:まずは「真珠の首飾り」を出して、読者の反応を見たのかもしれない。それから2年後に、コンスタントなディー判事シリーズの紹介(過去紹介作の新訳含む)が始まったと記憶している。