ウィッチフォード毒殺事件/アントニー・バークリー(晶文社)

1926年に発表された『ウィッチフォード毒殺事件』は、「レイトン・コートの謎」に続くロジャー・シェリンガムが探偵役を務めるシリーズものの第二作で、砒素を使った夫殺しの謎にシェリンガムが挑む。作者のアントニー・バークリーは、実際あった殺人事件に取材した作品をいくつも書いているが、本作品もそのひとつ。しかし、ノンフィクションのタッチはほとんどなく、容疑者を犯人とする証拠が多すぎることから、われらがシェリンガムが捜査を開始するなど、本格ミステリの定石を裏側から眺めるような発想にこの作家の皮肉屋としての面目躍如たるものがある。
本の雑誌2002年12月号]

ウィッチフォード毒殺事件 (晶文社ミステリ)

ウィッチフォード毒殺事件 (晶文社ミステリ)