レイトン・コートの謎/アントニー・バークリー(国書刊行会)

アントニー・バークリーの諸作品は、古典でありながら、遥かな時を越え現代のミステリ・ファンに今も新鮮な驚きをもたらしてくれる。記念すべきデビュー作である『レイトン・コートの謎』もその例外ではない。この作品は、名探偵でありながらミステリ史上もっともしくじりの多いアマチュア探偵ロジャー・シェリンガムが初お目見えする作品でもある。バークリーにしても、シェリンガムにしても、デビュー作らしい固さはほとんどない。ユーモラスな語り口で読者を密室殺人へと案内するが、持ち前のシニカルなものの見せ方は、すでにこの時点で普通じゃない。
[本の雑誌2002年12月号]

レイトン・コートの謎 世界探偵小説全集 36

レイトン・コートの謎 世界探偵小説全集 36