グッド・オーメンズ/ニール・ゲイマン(角川書店)

先に「アナンシの血脈」が紹介されたニール・ゲイマンが、テリー・プラチェットと組んだ作品で、そのタイトルからも察せられるであろう、映画「オーメン」を下敷きに、ハルマゲドンをめぐるてんやわんやを描いたファンタスティックな物語である。
ヨハネの黙示録に記されたハルマゲドンを招くために、人間の世界に送り込まれる筈だった悪魔の申し子。しかし、下級悪魔のクロウリーはちょっとした手違いから、人間の赤ん坊とのすり替えに失敗する。地獄にとっても、天国にとっても一大事であるこの不始末を、実はなあなあの仲にある天使のアジラフェールの手助けを得て、クロウリーは収拾に奔走するが、そうこうしているうちに、消えた子どもはすくすくと成長し、ひょんなことから黙示録の四騎士たちが出現してしまう。最後の審判の日が目前となってしまう事態に、悪魔と天使は相談をし、ある結論に達するが。
内容的にはダークファンタジーに属するこの作品だが、イブに林檎を食べさせた悪魔(ヘビ)と、エデンを守護する天使が、実は仲良し、という設定でも判るのように、人を喰ったユーモアが身上の愉快な作品だ。ギャグまたギャグで全編を覆うスラップスティックなユーモアは、クリスピンやラヴゼイら英ミステリの滋味に通じるものがある。
[ミステリマガジン2007年6月号]

グッド・オーメンズ〈上〉

グッド・オーメンズ〈上〉

グッド・オーメンズ〈下〉

グッド・オーメンズ〈下〉