掠奪の群れ/ジェイムズ・カルロス・ブレイク(文春文庫)

『掠奪の群れ』は、『無頼の掟』、『荒ぶる血』と、時代小説やウェスタンのカラーを巧みに織り込んだ犯罪小説が立て続けに紹介され、わが国の読者の胸を熱くさせたジェイムズ・カルロス・ブレイク、二年ぶりの帰還である。著者自らが語っているように、登場人物にしても、作中の出来事にしても、そのほとんどが史実という、デリンジャーやボニーとクライドの時代に材をとったノンフィクションなのだが、そこにただよう犯罪小説の香りはすこぶる濃密。プロの強盗である主人公ハリーの生涯を、饒舌な一人称で綴りながら、銃と仲間に深い信頼を寄せて、短く燃え尽きる生き方を読者に見せつける。起承転結に相当する四つの章を挟み込んだ印象的なプロローグとエピローグも、全力疾走で駆け抜けるかのような主人公の鮮烈な人生をさらに際立たせる効果をあげている。
[本の雑誌2008年11月号]

掠奪の群れ (文春文庫)

掠奪の群れ (文春文庫)