ピザマンの事件簿2 犯人捜しはつらいよ/L・T・フォークス(ヴィレッジブックス)

続編を待ちかねたL・T・フォークスの〈ピザマン〉シリーズだが、やっと『ピザマンの事件簿2 犯人捜しはつらいよ』が届けられた。酒のうえでの失敗から刑務所暮しを経験した主人公の中年男テリー。めでたく出所し、ピザの配達と大工という二束のわらじで仕事も順調、仲間たちとも仲良くやっている彼にとって目下唯一の悩みが、別居中の妻メリールーだ。第二作は、彼女をめぐるトラブルで幕があがる。
ある日の早朝のこと、テリーの暮すトレーラー・パークの一角で銃声がとどろき、殺人事件が発生した。現場では、こともあろうメリールーがアルコールと薬のへべれけ状態で警察に逮捕されてしまう。彼女はなぜか銃を携帯していた。テリーの心のどこかには、その前日、彼女に頼まれた引越しの手伝いをすげなく断ったことがひっかかっていた。前作の事件で仲間を率いて警察顔負けの捜査を繰り広げた件で、刑事のアランからはキツイおとがめを受けたが、妻が巻き込まれたとあっては黙って見過ごすわけにはいかない。アランの厳しい監視をかいくぐって、テリーと仲間たちの捜査がまたもはじまる。
世界広しといえども、労働と友情をテーマにしたミステリは、この〈ピザマン〉くらいだろう。さらに加えれば、ここまで読者を虜にする温かさと心地よさも。依然としてミステリ部分はB級だが、今回はスミティ・バーの改装問題や、テリーが勤めるピザ店のオーナー交替劇などちょっとしたサイドストーリーの絡みも楽しい。訳者あとがきのフォークスが作家活動を続けているというニュースも嬉しい限りだ。
[ミステリマガジン2011年9月号]

ピザマンの事件簿2 犯人捜しはつらいよ (ヴィレッジブックス)

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