湖のほとりで/カリン・フォッスム(PHP文芸文庫)

ここのところ次々と紹介される北欧からの新たな才能だが、ノルウェーの女性作家カリン・フォッスムもその一人だ。『湖のほとりで』は、映画ファンならご存知のように、同題のイタリア映画(日本公開は2009年)の原作で、スカンジナビア半島フィヨルドの国で犯罪小説の女王の称号をほしいままにするフォッスムの実力をまざまざと見せつけてくれる。
村でも評判の少女が、湖畔で死体となって見つかった。美しく聡明な少女は、なぜ殺されなければならなかったのか? 被害者の足取りをたどるセーヘル警部と部下のスカッレ刑事の地道な捜査は、紆余曲折を経ながらも一歩一歩真相へと迫っていく。注目すべきは、犯人像と犯行の動機をめぐる社会性の鋭さだろう。読みごたえある捜査小説の登場である。
[波2011年7月号]

湖のほとりで (PHP文芸文庫)

湖のほとりで (PHP文芸文庫)